「最近、階段を上るのが少し辛くなったな…」
「瓶のふたを開けるのが、前より大変になった気がする」
「ちょっとした段差で、つまずきやすくなったかも?」
70代を迎えると、ふとした瞬間に体の変化を感じることが増えるかもしれません。特に「筋力の低下」は、多くの方が気になることではないでしょうか。
筋力が落ちてくると、転びやすくなったり、思うように動けなくなったりして、活動範囲が狭まってしまうこともあります。そうなると、気持ちまで塞ぎ込んでしまうかもしれません。
でも、諦めるのはまだ早いです!70代からでも、適切なトレーニングを始めれば、筋力の低下を防ぎ、維持・向上させることは十分可能です。
この記事では、運動が苦手な方や、激しい運動は避けたいという方でも、ご自宅で安全かつ簡単に取り組める筋力トレーニングを5つご紹介します。特別な器具は必要ありません。無理なく、ご自身のペースで始めてみませんか?
なぜ70代でも筋力トレーニングが必要なの?
年齢を重ねると、誰でも自然と筋肉量は減っていきます。これを「サルコペニア(加齢性筋肉減弱症)」と呼びます。筋肉が減ると、次のような影響が出やすくなります。
- 転倒・骨折のリスクが高まる: 足腰が弱くなると、バランスを崩しやすくなります。
- 活動量が減る: 動くのが億劫になり、家にこもりがちになることも。
- 基礎代謝が落ちる: 太りやすくなったり、生活習慣病のリスクが高まったりします。
- 生活の質(QOL)が低下する: 自分の力でできることが減り、介護が必要になる可能性も。

しかし、筋肉はいくつになっても、使えば応えてくれる組織です。適度な筋力トレーニングは、これらのリスクを減らし、健康で自立した生活(健康寿命)を長く続けるために、とても大切なのです。
トレーニングを始める前の注意点
安全にトレーニングを行うために、始める前に以下の点を確認しましょう。
- 体調が良い時に行う: 熱がある、気分が悪い、痛みがある時は無理せず休みましょう。
- 無理は禁物: 「少し物足りないかな?」くらいから始め、徐々に慣らしていくのがコツです。回数やセット数も目安とし、ご自身の体力に合わせて調整してください。
- 水分補給を忘れずに: トレーニングの前後や途中でのどが渇いていなくても、こまめに水分を摂りましょう。
- 呼吸を止めない: 力を入れる時に息を吐き、力を抜く時に吸うように意識しましょう。
- 食後すぐは避ける: 食後1時間程度は空けてから行いましょう。
- 持病がある方・体力に不安がある方: 必ず事前にかかりつけの医師に相談し、許可を得てから行いましょう。

自宅でできる簡単トレーニング5選
さあ、いよいよトレーニングを始めましょう!ここでは、特に下半身や体幹など、日常生活で重要な筋肉を鍛える、簡単で安全なメニューを5つご紹介します。
1. 椅子スクワット(太もも・お尻)
立ち座りの動作を楽にし、歩行を安定させるための基本トレーニングです。
- 期待できる効果: 立ち上がりやすくなる、歩行時のふらつき軽減、膝への負担軽減
- やり方:
- 安定した椅子の前に、足を肩幅程度に開いて立つ。(椅子の背もたれやテーブルに手をついてもOK)
- 息を吐きながら、お尻を後ろに引くように、ゆっくりと腰を下ろしていく。(膝がつま先より前に出ないように注意)
- お尻が椅子に軽く触れるか触れないかのところまで下ろしたら、息を吸いながらゆっくりと元の姿勢に戻る。
- これを10回繰り返す。1日に1~2セットを目安に行う。
- ポイント: 背筋を伸ばしたまま行うのがコツです。膝に痛みがある場合は無理しないでください。
2. かかと上げ(ふくらはぎ)
歩行時の蹴り出す力やバランス能力を高めます。
- 期待できる効果: 歩幅が広がる、つまずきにくくなる、足のむくみ改善
- やり方:
- 足を肩幅程度に開いて立つ。壁や椅子の背もたれに軽く手を添えてバランスをとる。
- 息を吐きながら、かかとをできるだけ高く、ゆっくりと持ち上げる。
- 一番高いところで1~2秒キープし、息を吸いながらゆっくりとかかとを下ろす。(床につくギリギリで止めるとより効果的)
- これを10~15回繰り返す。1日に1~2セットを目安に行う。
- ポイント: 上体をまっすぐに保ちましょう。ふくらはぎの筋肉が使われているのを感じながら行います。
3. 椅子に座ったまま「もも上げ」(お腹・太ももの付け根)
歩く時に足を前に出す筋肉(腸腰筋)を鍛え、すり足やつまずきを防ぎます。
- 期待できる効果: 歩行がスムーズになる、つまずきにくくなる、姿勢改善
- やり方:
- 椅子に深く腰かけ、背筋を伸ばす。手は椅子の座面や太ももの上に置く。
- 息を吐きながら、片方の膝をお腹に引き寄せるように、ゆっくりと持ち上げる。(無理のない範囲で高く上げる)
- 息を吸いながら、ゆっくりと足を下ろす。
- 反対側の足も同様に行う。左右交互に10回ずつ繰り返す。1日に1~2セットを目安に行う。
- ポイント: 上体が後ろに倒れないように注意しましょう。お腹の力も意識すると効果的です。
4. 椅子に座ったまま「膝伸ばし」(太もも前側)
椅子スクワットが難しい方でも、太ももの前側(大腿四頭筋)を安全に鍛えられます。
- 期待できる効果: 膝への負担軽減、立ち上がりやすさの向上
- やり方:
- 椅子に深く腰かけ、背筋を伸ばす。
- 息を吐きながら、片方の膝をゆっくりと伸ばしていく。つま先は天井に向ける。
- 膝が伸びきるところまでいったら、1~2秒キープし、太ももの前側の筋肉に力が入っているのを感じる。
- 息を吸いながら、ゆっくりと足を下ろす。
- 反対側の足も同様に行う。左右交互に10回ずつ繰り返す。1日に1~2セットを目安に行う。
- ポイント: 膝を伸ばす時に、勢いをつけないようにしましょう。
5. タオルギャザー(足裏・足指)
足の指でタオルをたぐり寄せる運動です。足裏のアーチを支える筋肉や足指の機能を高め、バランス能力向上や転倒予防につながります。
- 期待できる効果: バランス感覚の向上、歩行の安定、偏平足の改善・予防、転倒予防
- やり方:
- 椅子に座り、床にタオルを広げる。かかとは床につけたまま、タオルの手前側の端に足の指を乗せる。
- 足の指全体を使って、タオルを「グッ、グッ」と手前にたぐり寄せていく。
- タオルをすべてたぐり寄せたら、今度は逆方向に広げる。
- これを3~5回繰り返す。反対の足も同様に行う。
- ポイント: ゆっくり、丁寧に行いましょう。足の指がしっかり動いているか意識してください。
トレーニングを楽しく続けるコツ
せっかく始めても、三日坊主になってしまってはもったいないですよね。無理なく続けるためのヒントをいくつかご紹介します。
- 「毎日やらなきゃ」と思わない: 週に2~3回でも大丈夫。「今日はできた!」と自分を褒めてあげましょう。
- 決まった時間に: 「朝ドラの後」「昼食の前」など、生活リズムの中に組み込むと習慣にしやすくなります。
- ながら運動もOK: テレビを見ながら「かかと上げ」や「膝伸ばし」をするなど、気軽に取り入れてみましょう。
- 記録をつける: 簡単なカレンダーに丸をつけるだけでも、達成感が得られ、モチベーション維持につながります。
- 仲間と一緒に: ご家族やご友人と一緒に励まし合いながら行うのも楽しいですよ。
- 好きな音楽を聴きながら: 気分転換になり、リズミカルに体を動かせます。
何よりも大切なのは、「無理せず、楽しく続けること」です。ご自身の体と相談しながら、焦らず、ゆっくりと取り組んでいきましょう。
まとめ
筋力の低下は、年齢とともに誰にでも起こりうることですが、決して諦める必要はありません。今回ご紹介したトレーニングは、どれも自宅で簡単に始められるものばかりです。
「継続は力なり」。
毎日少しずつでも体を動かす習慣をつけることで、筋力の維持・向上はもちろん、転倒を防ぎ、活動的な毎日を送る自信にもつながります。

さあ、今日からあなたも「貯筋」を始めて、いきいきとした素敵な毎日を送りませんか?この記事が、その第一歩を踏み出すきっかけとなれば幸いです。
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