相続人である子が請求して法務局から返ってくる「保管されていない」は、法務省の説明では、親が「遺言書保管所には一切遺言書を預けていない」という意味です。遺言書保管所は、自筆の遺言を預かる法務局のことです。親が預けたかどうかは、親が亡くなったあと、遺言書保管事実証明書という証明書を請求して確かめます。預ける制度は2020年7月10日に始まったので、それより前に亡くなった親は預けようがなく、この請求は要りません。
たとえば、こんな家です。母が亡くなりました。父はすでに亡く、相続人は長男と次女の二人です。母は生前「家は長男に」と話していましたが、遺言を書いたとは誰も聞いていません。法務局からも何も届いていません。
法務局には、遺言を預けた人が希望していれば、亡くなったあとに、その人が指定した人へ法務局から通知が届く仕組み(指定者通知)があります。希望していなければ知らせは来ないので、何も届かないことは、預けていない裏付けになりません。確かめるには請求するしかなく、遺言があっても自分の名前は無いかもしれない次女が、母の相続人として請求します。
二種類の証明書は、ほとんど同じ言葉で終わる
この証明書は、相続人でなくても請求できます。大阪法務局の案内は、請求人について「どなたでも請求できます」と書いています。ただ、証明書の文面は請求した人の資格によって二種類あり、法務省はその文面を「認証文」と呼んで表にしています。

二つの「保管されていない」は、真ん中の数語しか違いません。相続人として請求すると「上記の遺言者の申請に係る遺言書が」保管されていない、と証明されます。相続人以外として請求すると、そこに「請求人を受遺者等……又は遺言執行者等……とする」が挟まります。受遺者は、遺言で財産を受け取る人のことです。
法務省の案内の言い方では、相続人として請求すれば「特定の遺言者の遺言書が、遺言書保管所に保管されているかどうか」が分かります。この文に、遺言に請求した人の名前が書かれているかどうかの条件は付いていません。相続人以外の答えについては、大阪法務局の同じ案内に、遺言が保管されていても、請求人が相続人でも遺言に書かれた受遺者や遺言執行者でもなければ「保管されていない」旨の証明書が交付される、とあります。
答えを決めるのは、請求人として名前を書く人が、亡くなった人の相続人かどうかです。請求書の「請求人の資格」欄はそれを書き分ける欄で、相続人本人が請求人なら「1」、それ以外の人なら「2」を書きます。
相続人として請求したときの広いほうの答えにも、外側があります。法務省の注記の「一切預けていない」は、あくまで遺言書保管所に、という意味です。公証役場で作る公正証書遺言の探し方は公証役場の遺言検索の記事に書きました。

書類を集める人と、請求人として名前を書く人
確かめるなら、請求人は相続人である次女本人にします。戸籍を取り寄せるのを次女の夫が手伝う家でも、請求書の請求人は次女の名前です。次女の夫は母の相続人ではないので、夫の名前で出せば資格は「2」になり、返ってくるのは狭いほうの答えです。請求書の作成を司法書士などに頼むことはできる、と法務省は案内しています。
記入上の注意は、先に「遺言者の相続人である場合」を「1」とし、遺言執行者等は「その他相続人以外の者」と並べて「2」の側に置いています。だから、母の遺言で遺言執行者に指名されていると聞いている子も、相続人なら「1」です。

請求は郵送でできます。法務局の窓口に出向くなら予約が要り、窓口で受け取るなら顔写真付きの身分証も要りますが、郵送で出して郵送で受け取るなら、どちらも要りません。送り先は全国どの遺言書保管所でもよく、母の住所地の法務局でなくてもかまいません。
同封するのは、請求書、母が亡くなったことと次女が母の相続人だと分かる戸籍、次女の住民票の写し、手数料800円分の収入印紙、切手を貼った返信用封筒です。返信用封筒の宛名と住所は、請求書の請求人と同じにします。食い違うと返送できない、と東京法務局は注意しています。
冒頭の家でいえば、母が「家は長男に」という遺言を預けていた場合、次女の名前がどこにも無くても、次女の住所には保管されているという証明書が届きます。載るのは、その遺言の作成年月日、預け先の名前、保管番号までです。中身は、遺言書情報証明書(1通1,400円)を請求して読みます。
2026年10月24日時点。法務省の自筆証書遺言書保管制度の案内(相続人等の手続、証明書、手数料、通知、よくあるご質問)、遺言書保管事実証明書の交付請求書の様式と記入上の注意事項、大阪法務局「遺言書保管事実証明書の交付の請求方法」、東京法務局「遺言者が亡くなられた後に行う手続」(以上、2026年10月24日確認)によります。

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