亡くなった親の名義の不動産は、全国どこの法務局でも一覧にして証明してもらえます。2026年2月に始まった所有不動産記録証明書で、郵送でも請求できます。
例として、父がA市に住んでいた頃に土地を買い、その後B市へ移って、B市で亡くなったとします。姓は一度も変わっていません。子は、B市の実家のほかに父の土地があるのかを知りません。
この子がまず書きそうなのは、父の氏名と最後の住所、つまりB市の住所を1件だけ書いた請求書です。
法務局が探すのは「父」ではありません。請求書に書かれた氏名と住所の組に一致する名義人です。住所は、市区町村までそろうか、末尾5文字がそろうかのどちらかで一致になります。A市で買った土地の登記にA市の住所が書かれていれば、B市の住所1件の請求では市区町村がそろわず、当たらない可能性が高い。残る末尾5文字の枠は、二つの住所の終わりの5文字がたまたま重なるかどうかで決まり、請求する側が選べる条件ではありません。拾われることはあっても、A市の組を省く理由にはならない枠です。

書いた組の数だけ、探す範囲がある
この例なら、請求書に立てる組は2つです。

2つの住所を1つの検索条件の欄にまとめて書くことはできず、組ごとに欄を分けます。手数料は、書面で請求して証明書を1通取る場合、検索条件1件につき1,600円。2組なら2件分かかり、当たる不動産がなくても返ってきません。
組を減らせば取りこぼしが増え、増やせば費用が1件ずつ積み上がります。どの組を書くかが、探す範囲と費用を同時に決めます。
組の数は、父が名乗った氏名と、その氏名で住んだ市区町村の組み合わせの数です。A市の中で何度引っ越していても、一致ルールから読むかぎり、A市の組は1つで足ります。父の姓が途中で変わっていたなら、変わる前の氏名も、その氏名で住んでいた市区町村と組にして別に立てます。
これとは別に、法務省の案内に記載がなく、確かめるしかない場合が二つあります。A市が政令指定都市で区をまたいで移っていた場合と、住んだ町があとで合併した場合です。区や旧市町村の名前をどう突き合わせるかが分からないので、区や旧市町村の住所も組にするか、請求先の法務局に確かめてください。
請求の前に、父の住んだ市をそろえる
どの市を書くかは、記憶ではなく書類で決めます。戸籍の附票には、父が住んだ住所が、そこに住み始めた日と一緒に順に書かれています。
ただ、附票は本籍ごとに作られ、その本籍にいた間の住所しか載りません。父が結婚や転籍で本籍を変えていれば、前の本籍地の市区町村にもそれぞれ附票を請求します。
古い附票は、取れないこともあります。除かれたり作り直されたりした附票の保存期間は、2019年(令和元年)6月に5年から150年へ延びました。それより前に5年を過ぎたもの、つまり2014年(平成26年)6月19日以前に除かれたり作り直されたりした附票は、廃棄されていることがあります。
姓の移り変わりは附票ではなく、戸籍や除籍謄本でたどります。
取れた附票や除籍謄本は、そのまま請求書の添付になります。過去の住所や氏名で探す組には、それを証明する書類を添えることになっているからです。附票が取れなかった住所で組を立てるなら、何で証明するかを請求先の法務局に相談します。

相続人として請求するので、父との関係を示す戸籍謄本なども添えます。法定相続情報一覧図の写しがあれば、それで代えられます。本人確認は、印鑑証明書か、マイナンバーカードなどの本人確認書類の写しのどちらか一方です。請求書の様式と記載例は法務省のページにあります。
組をどれだけ正しく立てても、この証明書に出てこない不動産があります。所有権の登記がなく表示の登記しかない土地や建物、登記簿がコンピュータ化されていない不動産、そもそも登記されていない家屋です。証明書が一覧にするのは登記であって、父の財産ではありません。登記のない家屋は、市区町村が固定資産税の台帳を所有者ごとにまとめた名寄帳のほうに載っていることがあります。
返ってきた証明書が「該当不動産がない」と言っていても、それは書いた組では当たらなかったという証明です。父が土地を持っていなかったという証明ではありません。名前の字によっては、異体字がうまく置き換えられずに外れることもあります。該当なしを見たら、閉じる前に、組のリストに抜けた市や変わる前の姓がないかを見直します。
反対に、一覧に載った物件にも、条件がそろった同名の別人の不動産が混じることがあると、法務省自身が書いています。載った物件は、登記事項証明書で名義人を確かめてから相続の手続きに入れます。
2026年9月時点の不動産登記の法令と、法務省の所有不動産記録証明制度の案内・パンフレットによります。手数料は2026年9月29日に確認した額です。

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