この家を1戸と数えるか、2戸と数えるか。家が完成したあと、市町村が家屋調査で家そのものを見て、そこで数え方が決まります。
新築住宅の減額は、対象になる範囲の家屋の固定資産税を、一般の住宅なら3年度分、2分の1にする制度です。二世帯住宅では、それを家1棟に当てるのか、世帯ごとに当てるのかが、この数え方で分かれます。
「区分登記をすれば2戸になる」という説明があります。条文には、たしかに区分所有の住宅を専有部分ごとに見る経路があります。ただ、二世帯住宅の戸数に触れている市の解説を6つ読むと、その2戸はどれも別の経路で説明されていて、区分登記を要件に挙げているものは1つもありません。どの解説も、完成した家で見て歩けるものを並べています。
だから、いま机の上にある図面が、この結果を動かします。
世帯のあいだの仕切りと、それぞれの玄関・台所・トイレ
6つの市はどれも2つの要件で説明しています。世帯と世帯のあいだが壁や建具、あるいは階で仕切られていること。そして、それぞれの世帯が自分の玄関・台所・トイレを持ち、独立して生活できること。
図面の上で指せる場所に直すと、2か所です。世帯と世帯のあいだ。それぞれの水回りと出入口。
もっとも、この2か所には見方の幅があります。上下階で世帯を分ける形なら、あいだの仕切りを階段室や吹き抜けが貫いていないか。玄関を1つにする形なら、それぞれの出入口があると見るかどうか。どちらもこの2か所の外にある別の要件ではなく、同じ2か所をどこまで細かく見るかという話で、そこは市町村が決めます。

玄関も台所も1つで、世帯のあいだに仕切りが無い家を建てるなら、同じ判定を当てた答えが1になります。その家は家1棟でまとめて1回、判定を受けます。分岐はここで終わるので、この先は読まなくて構いません。
1戸か2戸かは、減額が倍になるかどうかの話ではない

戸数がここで動かすのは、減額の倍率ではありません。面積の要件が何回当たるかです。
その要件は、2つの数字でできています。40から240平方メートルは、この家が減額に入るかどうかを決める入口。120平方メートルは、入ったあとに減額が届くところを区切る上限です。役割は違いますが、当たる単位は共通で、2戸と数えられればどちらも世帯の区画に当たります。1戸なら、家1棟にまとめて1回ずつです。
2倍になる、と読まないでください。上限が世帯ごとに立つとき、その上限が当たる床面積も世帯ごとに分かれます。物差しは2回当たりますが、当たる先は同じ1棟を2つに割ったものです。

1戸と2戸の違いは、家全体が240平方メートルを超えたときにいちばん激しく出ます。大人2世帯分の生活空間を積むと、この数字は遠くありません。
延床260平方メートルの家を、子世帯150平方メートル・親世帯110平方メートルに余さず分けたとします。1戸と数えられれば、家1棟の床面積は入口の240平方メートルを超えているので、この家は入口で落ちます。減額が小さくなるのではなく、無くなります。2戸と数えられれば、150も110も入口の幅に収まるので、どちらの区画も通ります。
2戸として通ったあとに、さきほどの上限が当たります。150の区画には120平方メートルぶんの減額が届いたうえで、超えた30平方メートルが対象から外れます。110の区画は、110全部が対象のままです。
同じ家、同じ床面積で、結果がここまで離れます。次に立つ問いは、「どちらになるのか」です。
入口の幅は、下の40平方メートルでも効きます。いまの例の親世帯は110平方メートルで下限に余裕がありますが、そこをもっと小さく取る家では、その区画が入口を通るかという問いが、1戸か2戸かとは別に立ちます。
この戸数は土地の課税にも効きますが、そちらは数え方も及ぶ期間も別なので、この記事では扱いません。
「独立している」の中身は、法令に書かれていない
では、その「独立している」がどこまでを言うのか。政令は「独立的に区画された」としか書いていません。壁の位置も、建具の種類も、どの設備を各世帯に付けるかも、条文には一つも出てきません。
代わりに市町村が書いています。そして、その書きぶりは実際に割れています。


同じ設備について、要件の並びに入れている市と、有無は問わないと明記している市が、同時にあります。どちらかが条文を読み違えているのではありません。「独立的に区画された」を具体化する仕事が、市町村に置かれているということです。
ですから、ここに並んだ玄関・台所・トイレという言葉を、全国共通のチェックリストとして使わないでください。浴室を各世帯に置くかどうかは、着工前に決めきる判断です。ただ、その要否をこの記事の記述から決めることはできません。
「確実にするなら区分登記を」という近道
冒頭で要件ではないと書いた区分登記が、ここで一度戻ってきます。
要件ではないと聞いた人は、たいてい次にこう考えます。要件ではないが、確実にするならしておこうか。この近道には、固定資産税の外側から請求が来ます。
相続税に、小規模宅地等の特例というものがあります。亡くなった人の自宅の土地について、相続税を計算するときの評価額を一定の割合で下げられる特例です。国税庁の説明では、その人が住んでいた一棟の建物に区分所有建物である旨の登記がされていると、この特例で対象に含まれる範囲から、親族が住んでいた部分が外れます。使えなくなる、ではありません。範囲が狭まる、です。
固定資産税の2戸は、区分登記がなくても成立しうる。だとすると、固定資産税を理由にして区分登記をする必要は、ここには残りません。ただ、区分登記には固定資産税以外の目的もあります。登記をどうするかは、固定資産税の外側まで含めて、税理士や司法書士に聞く判断です。
確認は、いまの打ち合わせの中で終わる
聞く先は、建築予定地の市町村の資産税課、家屋の担当です。判定するのはその市町村であって、施工者でも登記の専門家でもありません。工務店やハウスメーカーの担当者の説明で止めないでください。
図面が固まる前に聞きます。着工したあとでは、壁も扉も水回りも動きません。
図面の上では、さきほどの2か所を指せば足ります。世帯と世帯のあいだが仕切られているか。それぞれの世帯に玄関・台所・トイレがあるか。その2か所をどこまで細かく見るかは、市によって違います。各世帯に浴室を置くかどうか、階段室や吹き抜けの扱い、玄関を1つにする形、狭い区画の面積といったここまでの気がかりも、同じ電話の中で続けて聞けます。
減額のために浴室を足す、扉を足すという話ではありません。設計の打ち合わせはもう始まっているので、増える手間は電話1本で済みます。
図面は暮らし方のために描くもので、税のために描き直す必要はありません。ただ、その図面のとおりに建った家を、市町村があとでもう一度、別の目的で見ます。その日に見られるものは、いま図面の上にあります。
2026年9月2日に確認した地方税法附則15条の6とその施行令附則12条、および同じ日に各市が公開していた記載によります。減額の対象になるかどうかの床面積の判定を、共同住宅等では家屋全体ではなく「人の居住の用に供するために独立的に区画された家屋の一の部分」ごとに行うこと、120平方メートルの上限もその区画ごとに立つこと、そして政令が「独立的に区画された」と書くだけで壁・建具・設備の要否を一つも定めていないことは、いずれも条文で確かめました。構造上の独立性と利用上の独立性という2要件は、神戸市・日立市・刈谷市・江別市・名古屋市・坂井市の6市のページで確認し、6件のいずれにも区分登記が判定要件として出てこないことも同日に確かめています。新築住宅の減額のページは横浜市のものも読みましたが、二世帯住宅についての記述が無かったので、この6件には数えていません。区分所有建物である旨の登記に関する記述は、国税庁タックスアンサーNo.4124(令和7年4月1日現在法令等)によります。各市への問い合わせは行っていません。
確かめられていないことが残っています。施行令にいう「共同住宅等」は「共同住宅、寄宿舎その他これらに類する多数の人の居住の用に供する家屋」と定義されるだけで、2世帯だけの家がここに含まれると明記した国の文書は、今回見つけられませんでした。本文が「2戸と認定されうる」までしか書いていないのはそのためで、根拠は6市の実務が一致しているという事実からの推定にとどまります。1戸か2戸かの認定が家屋調査のどの時点で確定し、その後の増改築で数え直されるのかも、読んだ市のページには記載が見当たりませんでした。玄関を1つにした場合の扱いは市ごとに書きぶりが違い、可否を判断できるだけの材料は揃っていません。区分登記をあとから解消できるかどうかについては、非公式の記述しか見つかっていないので扱っていません。240平方メートルを超える二世帯住宅がどれくらいあるかの統計も見ていません。刈谷市と神戸市のページは、床面積の記載が現行の基準に更新されていません。要件の骨格の根拠としては両市とも使いましたが、面積の数値はどちらからも採っていません。
この記事が扱っていない範囲も書いておきます。減額される額そのものの計算と金額、土地の課税の中身、小規模宅地等の特例の要件・限度面積・減額割合には触れていません。減額を受けるために申告が要るかどうかも扱っていません。区分登記された住宅の側の判定には専有部分ごとの面積要件が別にあり、そちらも扱っていません。居住部分が建物全体の半分未満になる店舗併用の家に別の入口の判定があること、建築基準法上の用途の区分、過去の床面積要件やその切替え、減額が何年度分になるかの数え方にも触れていません。市のページの表示は同日時点のもので、その後更新されている可能性があります。

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