葬儀からしばらく経って葬祭費や埋葬料の存在を知ったとき、手元にある日付はたいてい死亡日ひとつです。死亡届にも戸籍にも保険証の返納にも書いた日で、2年という期限を聞けば、まずその日から数えることになります。
ところが、故人が市区町村の国民健康保険か後期高齢者医療に入っていたなら、葬祭費の2年はその日から始まりません。数え始めは、葬祭を行った日の翌日です。自治体・広域連合・国保組合の公式ページを23件確認したところ、22件がその書き方をしていて、死亡した日を起算日にしている団体は1件もありませんでした。残る1件(横浜市)も基準にしているのは葬祭を行った日ですが、「翌日」の語がなく、実務上どう扱っているかまでは確認していません。
故人が会社の健康保険に入っていたのか、市区町村の国民健康保険・後期高齢者医療だったのか。まだ決まっていないなら、先に前の記事でそこを判定してください。会社の健康保険だった場合は、この先の数え方が変わりますが、たいていは日付を探し直さずに済みます。
死亡日から数えて出した日より、確認した22団体の締切が手前にくることはありません
数え始めが葬祭を行った日の翌日である以上、ズレる向きは一方向しかありません。葬祭を死亡より前に行うことはできないからです。
幅も決まっています。ずれるのは、死亡から葬祭までにかかった日数のぶんです。例をひとつ置きます。故人は市区町村の国民健康保険か後期高齢者医療の被保険者で、6月15日に亡くなり、葬儀は6月20日でした。
そして、引き取りや検案に日数がかかるといった、死亡から葬儀までが長引く事情と、遺族が手続きに遅れる事情は、同じところで重なります。
死亡日で数えて「もう2年を過ぎた」と結論した人が、市区町村の窓口ではまだ期限の内側にいる、ということが起こります。

会社の健康保険なら、最初に数えた日で合っています
故人が会社の健康保険に入っていたなら、向きが逆になります。協会けんぽは自分の公式ページで、埋葬料の数え始めを死亡年月日の翌日としています。慶應義塾健康保険組合も同じで、健康保険とは別の制度である公務員の共済組合(東京都職員共済組合)も、同じ日から数えています。仕事中や通勤中の災害で亡くなった場合の労災の葬祭料等も、死亡日の側です。
境目がひとつあります。故人に生計を維持されていた人がおらず、埋葬費として請求する場合は、埋葬を行った日の翌日から数えます。
この埋葬費に当たらないかぎり、基準になる日は最初に手元にあった死亡日のままで、数え始めはその翌日です。締切が、市区町村より後ろにくることはありません。

同じ2年が、窓口によって別の日から始まる。では法律としてはどちらなのか。これは市区町村の側の人にも会社の健保の側の人にも残る問いですが、法令を見にいっても決着はつきません。
国民健康保険法・健康保険法・高齢者の医療の確保に関する法律・労働者災害補償保険法は、いずれもこの給付を受ける権利について「これらを行使することができる時から二年」とだけ書いていて、死亡した日・葬祭を行った日・埋葬を行った日のどれを取るかを、一度も書き分けていません。書き分けているのは、保険者と自治体が公表している説明です。
だから、条文を読んでも自分の起算日は出てきません。そして解説は書く人ごとに分かれていて、検索で出てくるものの中には、埋葬料と埋葬費の数え始めを入れ替えて書いているものが実際にあります。読むのは解説ではなく、自分の窓口か保険者そのものの記載です。
「葬祭を行った日」が何の日かを書いている団体は、確認した中では少数でした
基準にする日が葬祭を行った日だと分かっても、それが何の日かが決まらなければ、数え始めは決まりません。通夜、告別式、火葬、納骨は、続けて行われることもあれば、日が離れることもあります。
東京都北区は、この曖昧さを1行のうちで閉じています。「葬儀をした日」のうしろに括弧を置いて、どの日を取るかを特定しています。

江東区は別のやり方をしていて、葬祭執行日にあたる行為を、死体の検案または運搬、火葬・埋葬または納骨、それらを行えない相当な理由がある場合のお別れ会・偲ぶ会等、と列挙しています。ただし、定義を置いている団体として今回見つかったのはこの2件で、多くのページは「葬祭を行った日」「葬儀を行った日」とだけ書いています。
なのでここでやるのは、日付を決めることではなく、日付を手元に置くことです。葬儀社の領収書や請求書、会葬御礼のはがきに、その日付が載っています。どれを取るかは自分では決めません。
日付が手元にあっても、「翌日から2年」はまだ満了日を言っていません。ここから先は民法の一般原則の話で、個々の窓口が同じ日で線を引いているかどうかは、今回確かめた範囲の外です。
「翌日から2年」を素直に足すと、満了の日を1日後ろに取ってしまいます。民法の一般原則では、2年が終わるのは起算日と同じ日付の日ではなく、その前日だからです。今回見た自治体や保険者のページは「翌日から2年を経過すると時効」といったところまでを書いていて、この最後の1日には触れていません。
締切の近くにいる人にとって、1日は受け取れるかどうかの差そのものです。だからここから先は、電話1本のほうが早いです。故人の住所地の市区町村(後期高齢者医療なら広域連合)、会社の健康保険だったなら故人が最後に入っていた保険者に、その窓口が何の日を起算日にしているのか、自分の場合の満了日はいつかを聞きます。
死亡日から数えて出した答えが、本当の締切より後ろになることは、確認した22団体の書き方であればありません。だからその数え方で「まだ日がある」と出たなら、締切が実際にはもっと後ろにあるというだけで、答えは変わりません。
そして「もう過ぎた」という答えは、同じ数え方のままでは決まりません。死亡日ひとつで確定できるのは、間に合っているという答えです。
2026年8月24日に確認した法令・自治体・保険者の公表内容によります。起算日を確かめたのは自治体・広域連合・国保組合の公式ページ23件で、悉皆調査ではありません。うち22件が「葬祭を行った日(葬儀を行った日/葬祭を執行した日/葬祭執行日)の翌日から2年」と記載し、死亡した日を起算日とする記載は1件もありませんでした。横浜市だけが「葬祭を行ってから2年」で「翌日」の語を置いておらず、同市の実務上の扱いまでは確認していません。「葬祭を行った日」が何の日かを公式ページで定義している団体は少なく、今回見つかったのは北区(告別式の日)と江東区(検案・運搬/火葬・埋葬・納骨/お別れ会等の列挙)の2件です。満了日が「起算日に応当する日の前日」になることは民法140条・143条2項の一般原則からの計算で、個々の窓口が同じ日で運用しているかは確認していません。時効の根拠条文は国民健康保険法110条、健康保険法193条、高齢者の医療の確保に関する法律160条、労働者災害補償保険法42条です。時効を過ぎた場合の取扱いについては、葬祭費・埋葬料に関する公表資料を今回の調査では見つけられませんでした。これは、そうした取扱いが存在しないことを確認したという意味ではありません。本文で名前を挙げた団体・保険者のページは、いずれも同日時点の表示で、その後更新されている可能性があります。支給額、必要書類、火葬のみを行った場合に支給されるかどうか、2020年の民法改正に伴う条文の書き換えには触れていません。申請できる人の条件も、埋葬費の境目にあたる生計維持の有無のほかは扱っていません。

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