手帳の診断書を書いた耳鼻科の先生は、都道府県(指定都市と中核市ではその市)の指定を受けた医師です。聴覚障害について診断書を書けるのは、この指定を受けた人に限られます。補装具費の意見書のほうも、書ける医師を国の指針が一覧にしていて、その一覧の先頭に同じ指定医が置かれています。手帳のときの先生に意見書まで頼めることがあるのは、この重なりのためです。
残った自己負担を医療費控除にも回すつもりなら、そこで別の医師が出てきます。国税庁が出している補聴器についての情報は、「一般社団法人耳鼻咽喉科学会が認定した補聴器相談医」が「補聴器適合に関する診療情報提供書(2018)」によって、補聴器が診療等のために直接必要である旨を証明している場合に、購入費用が控除の対象になる、と書いています。日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会が、この補聴器相談医を認定し、名簿を公表しています。この認定は、都道府県の指定にも、国の一覧にも入っていません。
支給決定の通知が届くところまで手続きを一つも間違えずに通しても、それだけでは、控除の条件になる紙は1枚も手元に来ません。
指定するのは行政、認定するのは学会です
都道府県の指定について国が出している通知は、聴覚障害に関係する診療科名を挙げています。耳鼻いんこう科などのほかは、腫瘍や神経の障害で聴力を失った人の診療に限られます。聴覚障害の診断書を書けるのが主に耳鼻いんこう科の医師なのは、この通知のためです。
意見書のほうを定めているのは、別の資料です。補装具費支給について国が出している指針の一覧は、先頭に置いた指定医に専門医であることを重ねていて、指定を受けていれば自動的に入る、という関係ではありません。一覧にはほかの医師も並んでいます。
二度出てくる医師の要件を、同じ先生で二度とも満たせた人にとって、三度目も同じだろうと考えるのは自然です。
補聴器相談医のほうは、学会が認定しています。学会は、補聴器相談医以外の医師が記入した場合には医療費控除が認められない可能性がある、と書いています。耳鼻咽喉科の専門医であることも、都道府県の指定を受けていることも、ここでは代わりになりません。
この三つは、三つとも別の資料に書かれています。どの資料も自分の側の医師しか説明しないので、突き合わせた紙がそもそもどこにもありません。

店のほうは、縛る側と縛らない側が入れ替わります
購入先にも同じ分断があります。ただし向きが逆です。
補装具費支給には、販売店の法的な指定制度がありません。国の指針が市町村に求めているのは、申請者が適切な補装具事業者を選定するにあたって必要となる情報の提供に努めることで、購入先を認定補聴器専門店に限る規定は置かれていません。
医療費控除の側は反対です。補聴器について国税庁が出しているその情報には販売店の条件が一言も出てこないのに、学会は一般向けのページで「認定補聴器専門店もしくは認定補聴器技能者以外から補聴器を購入した場合には、医療費控除を受けることができません」と書いています。ただし、店のほうの「認定」を出しているのは学会ではなくテクノエイド協会で、学会は自分が出していない認定を控除の条件にしています。

学会の書式で宛先が認定補聴器専門店と認定補聴器技能者に固定されている以上、それ以外の店で買えば、欄を埋める相手がいなくなります。学会は一般向けのページでは言い切り、書式のQ&Aでは「認められない可能性があります」と書いています。Q&Aは控除の可否を宛先欄の状態に結びつけていますが、言い切っているページのほうは、理由を書かずに購入先そのものを条件にしています。
医師の側は、行政が指定したうえに学会の認定が足される形でした。店の側は、行政が縛らず、学会だけが縛っています。市町村が案内する事業者の情報は、補装具費支給のための情報提供として求められているものです。かといって、行政の側に規定がないことは、認定店以外を選んでよいということでもありません。
そして店の選択は、買った時点で固定されます。学会は、過去の補聴器購入について遡って診療情報提供書を発行することは適切ではありません、と書いています。
控除に回せるのは残りの部分。学会のQ&Aがそう整理しています
補装具費で出るのは、原則として1種目に1個です。金額も基準額までで、それを超える機種を選んで差額を自分で払う道はありますが、差額さえ出せば好きな機種にできる制度ではありません。補聴器では基本構造が同じであることが条件になると東京都の資料は書いていて、超過分の中身にも国の指針が別の条件を置いています。どこまで認めるかを決めるのは市町村なので、機種を決める前に確認することになります。
だから支給を受けても、支払いがそこで終わるとは限りません。利用者負担は通常1割ですが、市町村民税が非課税の世帯には、この負担が生じません。基準額を超えて選んだ差額のほうは、この区分にかかわらず自分で払う分です。控除の話が出てくるのはこの残りについてであって、支給された補装具費そのものではありません。
学会のQ&Aは、障害者総合支援法で給付される助成金は控除の対象に含まれず、控除として申請する補聴器の購入費用には自己負担金と差額購入費が該当すると「考えられます」と書いています。断定ではなく、推定の形です。国税庁の側に補装具費支給を名指しした見解は、探した範囲では確認できていません。

いくらまで認められるかも、「一般的に支出される水準を著しく超えない部分」という限定のまま、最終的には各地の税務署が見ます。先に決めておけるのは、金額ではなく、書いてもらう相手が誰かのほうです。
補聴器相談医の名簿も認定補聴器専門店の一覧も、登録なしで開けます。名簿は都道府県ごとのPDFで、開くのは自分の県のファイル一つです。勤務先を公開してよいと答えた医師だけが名簿に出るので、名前が見当たらなくても、その先生が補聴器相談医でないとは限りません。そのときは、次の診察でその先生に直接聞くことになります。どちらも、新しい医師や店を探すためではなく、もう会っているその耳鼻科と、案内された一覧から選ぶその店を確かめるために開きます。
2026年8月10日に調べ、医師と店の要件および国税庁側の資料は同年8月17日に再確認しました。補装具費の個数、差額自己負担の扱い、控除の対象になる金額の限定は、この再確認には含めていません。補装具費の基準額や所得制限の額は告示・政令の改正で動くことがあり、自治体独自の高齢者補聴器助成は年度ごとに更新されます。国税庁が障害者総合支援法の補装具費支給と医療費控除の関係を名指しで示した資料は、タックスアンサーと質疑応答事例の該当ページ、文書回答事例の索引、補聴器についての情報を当たった範囲では確認できていません。国税庁の文書にある「一般社団法人耳鼻咽喉科学会」という表記は、厚生労働省からの照会文にも国税庁の回答文にも同じ形で使われており、学会自身の通知文書が記録している改称の前後(2021年5月の定時社員総会で、「一般社団法人日本耳鼻咽喉科学会」から現在の名称への改称を決定)のどちらの正式名称とも一致しません。補聴器相談医を認定し名簿を公表しているのが日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会であることは、同学会の名簿ページによります。自己負担金と差額購入費が控除の対象になるという整理は日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会のQ&Aによるもので、学会自身が「該当すると考えられます」という推定形で書いています。控除の対象になる金額は「一般的に支出される水準を著しく超えない部分の金額に限る」とされ、最終的な判断は各地の税務署によります。手帳の診断書を書ける医師(身体障害者福祉法第15条第1項の指定医)、補装具費の意見書を書ける医師(補装具費支給事務取扱指針の別表2。成人については4通りが並んでおり、その先頭が、第15条第1項の指定医であることに日本専門医機構または所属学会が認定した専門医であることを重ねたものです)、控除の診療情報提供書を書ける補聴器相談医は、それぞれ別の資料で定められており、本文と図の対比は三つの資料を突き合わせた編集部の整理です。この形で書かれた一次情報はありません。補装具費支給の側に販売店の指定制度がないことは、国の指針に購入先を限る規定が置かれていないことによるもので、認定補聴器専門店以外からの購入を勧める趣旨ではありません。差額自己負担をどこまで認めるかは市町村が判断します。基本構造の同一性と事前の相談は東京都の事業者向け資料により、超過分の内容についての限定は国の指針によるもので、運用は自治体で異なることがあります。利用者負担が通常1割になることと、市町村民税が非課税の世帯で負担上限月額が0円になることは、障害者総合支援法施行令と国の指針によります。自治体独自の助成を受けた場合に医療費控除でどう扱うか、現物支給を選んだ場合にどうなるかについては、直接示した一次情報を確認できておらず、本記事では扱っていません。

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