認定長期優良住宅の固定資産税の減額の申告書は、所有者から出すものだと条文が決めています。引き渡しを待っているあいだの買主に、この申告書は出せません

共通組版のアイキャッチ。左に「申告できる人まで、法律が決めている」の文字と「認定長期優良住宅の減額と、その申告」の小見出し。右の濃い緑の円の中に、文字のない図形。斜めに傾いた生成り色の印章が一本あり、その印面の先に朱色の丸い印影が一つ押されている シニアの家計管理

引き渡しを受けたら、市役所へ行って、この住戸の減額の申告を出す。完成済みの分譲マンションや建売を認定長期優良住宅として買うとき、その段取りにおかしなところはありません。

自治体のページには「申告することにより固定資産税が減額されます」と書いてあります。地方税法の附則にも、この減額を申告と結び付けた一文があります。だから鍵を受け取ったあとの用事として、申告を予定に入れておく。ここまでは、書いてあるとおりです。

その一文には、期限のほかにもう一つ決めていることがあります。

申告できる人は、条文に名前で書いてある

条文が置いている条件はこうです。この減額は、認定長期優良住宅の所有者から、決められた期間のうちに、書類を添えた申告書の提出がされた場合に限り、適用する。

e-Gov法令検索に表示された地方税法附則第十五条の七第三項の全文。「前二項の規定は、認定長期優良住宅の所有者から、当該認定長期優良住宅が新築された日から当該認定長期優良住宅に対して新たに固定資産税が課されることとなる年度の初日の属する年の一月三十一日までの間に、総務省令で定める書類を添付して、当該認定長期優良住宅につきこれらの規定の適用があるべき旨の申告書の提出がされた場合に限り、適用するものとする。」と書かれている
期間の指定は、新築された日、年度の初日、その属する年の一月三十一日、と入れ子で続きます。人を名指しした語は「認定長期優良住宅の所有者」で、その手前に一度出たあと、この項では別の名前は現れません。日付を探して読むと、ちょうどこの一句を通り過ぎます。

引き渡しを受けるまで、買主はこの住戸の所有者ではありません。だから申告書を出せる期間がまるごと残っていても、そのあいだ、買主はこの申告書を出せません。間に合うかどうかという問いの手前に、出す資格があるかどうかという一段があります。

申告することにより減額されます、と書いたその一文は、正しい記載です。ただしその一文は、誰が申告するのかまでは書いていません。この手続きを、自分が持ってから始まるものとして説明している解説が流通しています。

同じ一文を、逆から読みます。「所有者から」は、引き渡しの日から買主を内側に入れる語でもあります。引き渡しがまだ申告できる期間の内側にあるなら、その日から買主が所有者です。自分の手で間に合わせられます。

その期間は、住戸が新築された日から決まっていて、買う人の予定を見ません。同じことは新築住宅の減額の年度数についても言えて、そちらは前の記事で書きました。

引き渡しがその期間の内側に来るのか外に出るのかを、ここで暗算しないでください。期間がいつまでかは、市町村の資産税課(東京23区なら都税事務所)が答えられます。

期限がいつまでかは、そうやって聞けば分かります。もう出ているかどうかは、そうはいきません。申告書を出せる立場に買主はまだいないので、この住戸の申告が済んだという出来事は、起きているとすれば契約の向こう側です。

だから買主は、契約の相手である売主に聞くことになります。同じ一つの手続きについて、日付を聞ける相手と、済んだかどうかを聞ける相手が、別の場所にいるということです。

マンションには、同じ場所にもう一つの名前がある

区分所有の住宅では、この手続きが区分所有者一人ひとりの申告書で行われるとは限りません。管理者等が申告書と同じ期間のうちに定められた書類を出し、その住宅が要件に該当すると認められるときは、市町村長は減額を適用できる、と条文にあります。

地方税法のこの一文は、「管理者等」の意味を別の法律から借りています。そちらの条文が名前を挙げているのは、区分所有法の団体について選任された管理者と、その団体が法人になっている場合の理事の、二つだけです。自治体のページには、これを「マンション管理組合の管理者等」と書き直しているものがあります。建物の管理を任されている人という意味ではありません。

だから、マンションを買う人が売主に尋ねたときの答えが「管理組合から出ます」になることがあります。実在する経路なので、その答えを疑う必要はありません。ただ、その答えはまだ、出たとは言っていません。

広島市の認定長期優良住宅に対する軽減措置のページの一文。「※マンションなどの区分所有に係る認定長期優良住宅については、新築された年の翌年の1月31日までに、マンション管理組合の管理者などから変更認定通知書の写しが提出され、要件に該当すると認められる場合は、申告書の提出がなくても、この軽減措置の適用を受けることができます。」と書かれている
広島市の書き方。この文は申告書を省きますが、期限も、出す人も、出す物も省いていません。「申告書の提出がなくても」の手前に、新築された年の翌年の1月31日という期日と、マンション管理組合の管理者などという相手と、変更認定通知書の写しという書類が並んでいます。

条文はこの経路を置きましたが、管理者等に提出を義務づける規定までは置いていません。

期限のあとの一本は、買主が請求できる道ではない

期限を過ぎてから申告書が出された場合でも、管理者等の書類が出された場合でも、期間内に出されなかったことについてやむを得ない理由があると市町村長が認めるときは、減額を適用することができる。条文はもう一つ、そう書いています。

道は残っています。ただし書き方が「適用することができる」で、買主から請求できるものではありません。何がやむを得ない理由に当たるのかを決めた国の基準は、今回は見つかりませんでした。

すでに引き渡しを受けていて、申告が出ていないと分かった人は、ここで自分から終わりにしないでください。窓口に電話して事情を話すところまでは、自分の手にあります。

契約前の人には、逆の読み方になります。この一本があるから後で何とかなる、とは読めません。

編集部が作成した図。左に「この住戸に減額が適用される(地方税法附則15条の7)」と書かれた箱があり、そこから右へ三本の線が伸びる。線の先の箱は上から「所有者が申告書を出す(引き渡しを受けるまで、買主はこの所有者ではない)」「管理者等が書類を出す(区分所有の住宅。申告書がなかったときの経路)」「期限のあとに出す(出すのは所有者か管理者等)」。図の下に赤い注記で「期限のあとの提出を通すかどうかは、市町村長が決めます」と書かれている
三つとも、出す人が先に決まっている経路です。三本目に新しい名前は出てきません。期限に間に合わなかったときに出せるのも、上の二本と同じ相手です。

この減額を見込んで買う人にとって、それが実際にこの住戸の税額に乗るかどうかは、誰かが申告書か書類を出したかどうかに懸かっています。

売主に聞いて、名前を持ち帰る

契約する前に、売主に聞きます。この住戸の認定長期優良住宅の減額の申告は、もう出ていますか。まだなら、誰が、いつ出しますか。引き渡しが期間の内側に来て、自分の手で間に合わせられる人も、まず同じことを聞きます。すでに出ているとすれば、それは引き渡しより前の出来事だからです。

日付ではなく、済んだかどうかと、担当している人の名前を持ち帰ります。

返ってくる答えは一つに決まりません。もう出ている、という答えもあれば、これから出す、という答えもあります。どちらも条文にある経路の話で、その中身を買主が評価する材料はありません。

「これから出す」は、まだ起きていないことについての答えです。出す人が決まっているという意味では正しくても、出たという意味にはなりません。

答えが返ってこないなら、それは誰かの落ち度ではなく、この住戸についてまだ確かめられていない、という状態です。

契約の前に買主の手に入るのは、済んだという保証ではなく、この一件を持っている人の名前です。

2026年9月5日に確認した地方税法の附則の条文と、同じ日に公開されていた自治体のページおよび民間の解説記事、ならびに2026年9月6日に取り直した長期優良住宅法の条文によります。この減額が「認定長期優良住宅の所有者から」の申告書の提出がされた場合に限り適用されること、区分所有の住宅については管理者等が同じ期間内に定められた書類を出し要件に該当すると認められるときに適用できること、期限の経過後に出された場合でも市町村長がやむを得ない理由を認めるときは適用することができることは、いずれも条文で確かめました。「管理者等」として条文が挙げているのが区分所有法の団体について選任された管理者と法人の理事の二つであることは、地方税法のこの一文が参照している長期優良住宅法の条文で確かめました。「申告することにより固定資産税が減額されます」という記載と、同じ語を「マンション管理組合の管理者等」と書き直している記載は、いずれも自治体のページで確認しています。この手続きを買主が持ってから始まるものとして説明している解説は、民間の記事です。

確かめられていないことも書いておきます。分譲事業者が完成後の在庫の段階で申告しているのが実務なのかどうかを示す資料は、今回は見つかっていません。本文が売主への確認を済否と担当の二つに絞っているのは、そのためです。

この記事の外に置いたものもあります。減額される額と税額の計算、金額には触れていません。残りの年度数の数え方、申告書の様式・添付書類・提出先、区分所有の経路がいつからあるものかにも触れていません。期限を過ぎたあとの扱いについて自治体ページの書きぶりがどう違うかも扱っていません。引き渡しのあと、所有者が変わってから買主の側で何か要るのかどうかも扱っていません。ここで見た自治体のページはどれも2026年9月5日の表示で、その後に書き換わっている可能性があります。

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