海外に住む日本人が実家の名義を受ける登記。10月5日から申請書に4行、国籍の書類は相続なら戸籍で足りる

共通組版のアイキャッチ。左に「海外に住む日本人も、国内と同じ4行を書く」の文字と「10月5日からの登記申請書と、国籍の書類」の小見出し。右の濃い緑の円の中に、文字のない図形。半円の支え具と細い支柱、楕円の台座に載った生成り色の地球儀が少し傾いて立ち、表面には緑の経線と緯線。右上寄りに朱色の丸い印が一つ、輪に囲まれて付いている シニアの家計管理

法務省が10月5日以降の申請用に出した登記の記載例は、今回加わった部分を赤い字で刷っています。同じ1枚の上で、国内に住む人の欄は「国籍等」の1行だけが赤。海外に住む日本国籍の人の欄は、氏名のふりがな、生年月日、国籍等、メールアドレスの4行すべてが赤です。

法務省の登記申請書の記載例の一部。「○○国○○州○○通り 持分4分の1 民事 優子」の下の表の4行、「氏名ふりがな みんじ ゆうこ」「生年月日 平成10年10月10日」「国籍等 日本」「メールアドレス opqrstu789@example.com(注)」が、項目名・記入内容ともすべて赤字。表の下の「国内連絡先 ○○市○○町四丁目5番6号 民事 次郎」は黒字
赤が10月5日以降に加わった記載です。すぐ下の「国内連絡先」は黒。海外に住む名義人には2024年4月から求められてきた欄で、赤の4行はこれとは別に書きます(出典:法務省「令和8年10月5日以降に所有権の移転の登記を書面で申請する場合の記載例」1頁(https://www.moj.go.jp/content/001434184.pdf)から編集部が一部を切り出し。2026年10月15日確認)。

法務省のこの1枚とは別に、法務局も登記の原因ごとに記載例を出しています。その売買の記載例は、一つ前の版では、ふりがな・生年月日・メールアドレスを書くよう求める注に「住所が海外の方や法人については記載不要です」と添えていました。10月5日以降の版では、同じ注の括弧は「法人については記載不要です」だけになっています。

10月4日までの規則に沿った案内は、公式のページにも残っています。名古屋法務局の「スマート変更登記・検索用情報の申出」のページ(更新日2026年4月1日、10月15日確認)は「※法人である場合、海外に住所を有する場合等は、申出ができません。」と書いていて、国籍等の欄には触れていません。ここでいう申出は、登記を申請するときに申請書の中で名義人の検索用の情報を届けることで、10月4日までは海外に住む人はその外に置かれていました。10月5日以降の申請では海外に住む人も申し出る側に入るので、書き方は表題に「令和8年10月5日以降」とある記載例を見ます。

申請書の欄が4行ぶん赤くなったのに対して、同じ記載例の2頁目、添付情報の欄で赤字の書類名は「国籍等を証する情報」、つまり国籍の書類の1つです。

同じ記載例の2頁目の「添付情報」欄。「登記識別情報(登記済証) 登記原因証明情報 会社法人等番号 代理権限証明情報」「印鑑証明書 住所証明情報 国籍等を証する情報 国内連絡先事項証明情報」「国内連絡先承諾書」の3行で、赤字は「国籍等を証する情報」だけ
同じ欄の住所証明情報と、国内連絡先の2つの書類は黒。海外に住む名義人がこれまで出してきた住所の証明と国内連絡先の書類は、この記載例では今回の追加の外に置かれています(出典:法務省「令和8年10月5日以降に所有権の移転の登記を書面で申請する場合の記載例」2頁(https://www.moj.go.jp/content/001434184.pdf)から編集部が一部を切り出し。2026年10月15日確認)。

日本国籍で海外に住む長男が、日本に住む母の名義の家を受けるとします。長男は国外転出届を出していて日本に住民票はなく、本籍は日本の市区町村に残っている。名義人は長男1人。家が長男に移る原因は、母が亡くなっての相続、生前の贈与、長男が買い取る売買のどれかです。記載例は「10月5日以降に申請する場合」と題されていて、亡くなった日や契約の日ではなく、申請する日で版が分かれる作りです(国内に住む人の場合は以前の記事で扱いました)。

国籍の書類を戸籍が兼ねるかは、原因で決まる

相続で、長男が相続人だと分かる戸籍の証明書を相続登記に出すなら、法務局の相続の記載例は、日本国籍の人についてはそれで国籍の証明として「足りますので、重ねて提出する必要はありません」と書いています。

贈与なら、話が変わります。贈与の記載例の注は、日本国籍の人の国籍の証明として本籍入りの住民票の写しと戸籍の附票の写しを挙げるだけで、戸籍で足りるという一文がありません。国内に住む人なら住民票コードを書いて国籍の書類を省ける扱いもありますが、法務省の通達はこれを日本に住所がある人に限っていて、住民票のない長男は使えません。買い取る場合も、売買の記載例の注は贈与と同じ文面です。

「海外に住む日本国籍の人の、国籍の書類」と題した分かれ図。左の根「家を受け取る原因」から2本の枝。上の枝「相続 → 相続人の戸籍で足りる」、補足「戸籍の証明書を出すなら、記載例の注:『重ねて提出する必要はありません』」。下の枝(緑で強調)「贈与・売買 → 戸籍で足りるという一文はない」、補足「注の例示は、本籍入りの住民票の写し・戸籍の附票の写し等/住民票コードで省ける扱いは、日本に住所がある人だけ」。赤字の注記「国外に住む人向けの個別の例示は、公式資料に見当たりません」
相続の側の一文は、法定相続と遺産分割の両方の記載例に同じ趣旨で入っています。遺産を分ける話し合いをしてもしなくても、この枝は変わりません(図:ゆたか日和編集部〔法務省の記載例・通達をもとに作成〕。2026年10月15日時点)。

申請書の4行のほうは、相続でも贈与・売買でも同じです。司法書士に頼むなら、依頼のときに渡す情報になります。メールアドレスは長男本人だけが使っているものを書き、持っていなければ「なし」と書く扱いが、法務省の一般の案内に示されています。

贈与・売買で受けるなら、国籍の書類として何を出すかを、申請先の法務局か依頼する司法書士に確かめます。国外に住む人向けの個別の例は、法務省の通達にも記載例にも見当たらないからです。例示の2つのうち、住民票のない長男に手が届くのは戸籍の附票の写しです。附票は戸籍そのもの(戸籍謄本)とは別の書類で、同じ本籍地の市区町村が出します。それで足りるかも含めて聞いたうえで、取り寄せるなら本籍地の市区町村のウェブサイトで海外からの請求の方法を探し、届くまでの日数を見て申請の日から逆算します。

スマート変更登記は、帰国してから

4行のうち国籍等を除く3行は、国内に住む人にとっては、住所が変わったときに法務局が登記の住所を書き換えるスマート変更登記のための情報として案内されています。海外に住む人は申し出てもその対象にならない、と法務省は書いています。仕組みが日本の住民票の情報を見て動くためです。

10月5日以降に海外に住んだまま申し出た人が、のちに日本へ住所を移しても、それだけでは対象に入りません。移したあとにもう一度申し出れば対象になる、と法務省のQ&Aは答えています。長男が帰国して住所を移したら、そのときにもう一度申し出ます。

法務省「令和8年10月5日以降に所有権の移転の登記を書面で申請する場合の記載例」、法務局の所有権移転登記申請書の記載例(売買〔新旧〕・贈与・相続)、法務省民事局の通達(令和8年9月4日)、法務省「検索用情報の申出について」「住所等変更登記の義務化に関するQ&A」、名古屋法務局「スマート変更登記・検索用情報の申出」、e-Gov法令検索の不動産登記規則(以上、2026年10月15日確認)によります。

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