法務省が10月5日以降の申請用に出した登記の記載例は、今回加わった部分を赤い字で刷っています。同じ1枚の上で、国内に住む人の欄は「国籍等」の1行だけが赤。海外に住む日本国籍の人の欄は、氏名のふりがな、生年月日、国籍等、メールアドレスの4行すべてが赤です。

法務省のこの1枚とは別に、法務局も登記の原因ごとに記載例を出しています。その売買の記載例は、一つ前の版では、ふりがな・生年月日・メールアドレスを書くよう求める注に「住所が海外の方や法人については記載不要です」と添えていました。10月5日以降の版では、同じ注の括弧は「法人については記載不要です」だけになっています。
10月4日までの規則に沿った案内は、公式のページにも残っています。名古屋法務局の「スマート変更登記・検索用情報の申出」のページ(更新日2026年4月1日、10月15日確認)は「※法人である場合、海外に住所を有する場合等は、申出ができません。」と書いていて、国籍等の欄には触れていません。ここでいう申出は、登記を申請するときに申請書の中で名義人の検索用の情報を届けることで、10月4日までは海外に住む人はその外に置かれていました。10月5日以降の申請では海外に住む人も申し出る側に入るので、書き方は表題に「令和8年10月5日以降」とある記載例を見ます。
申請書の欄が4行ぶん赤くなったのに対して、同じ記載例の2頁目、添付情報の欄で赤字の書類名は「国籍等を証する情報」、つまり国籍の書類の1つです。

日本国籍で海外に住む長男が、日本に住む母の名義の家を受けるとします。長男は国外転出届を出していて日本に住民票はなく、本籍は日本の市区町村に残っている。名義人は長男1人。家が長男に移る原因は、母が亡くなっての相続、生前の贈与、長男が買い取る売買のどれかです。記載例は「10月5日以降に申請する場合」と題されていて、亡くなった日や契約の日ではなく、申請する日で版が分かれる作りです(国内に住む人の場合は以前の記事で扱いました)。
国籍の書類を戸籍が兼ねるかは、原因で決まる
相続で、長男が相続人だと分かる戸籍の証明書を相続登記に出すなら、法務局の相続の記載例は、日本国籍の人についてはそれで国籍の証明として「足りますので、重ねて提出する必要はありません」と書いています。
贈与なら、話が変わります。贈与の記載例の注は、日本国籍の人の国籍の証明として本籍入りの住民票の写しと戸籍の附票の写しを挙げるだけで、戸籍で足りるという一文がありません。国内に住む人なら住民票コードを書いて国籍の書類を省ける扱いもありますが、法務省の通達はこれを日本に住所がある人に限っていて、住民票のない長男は使えません。買い取る場合も、売買の記載例の注は贈与と同じ文面です。

申請書の4行のほうは、相続でも贈与・売買でも同じです。司法書士に頼むなら、依頼のときに渡す情報になります。メールアドレスは長男本人だけが使っているものを書き、持っていなければ「なし」と書く扱いが、法務省の一般の案内に示されています。
贈与・売買で受けるなら、国籍の書類として何を出すかを、申請先の法務局か依頼する司法書士に確かめます。国外に住む人向けの個別の例は、法務省の通達にも記載例にも見当たらないからです。例示の2つのうち、住民票のない長男に手が届くのは戸籍の附票の写しです。附票は戸籍そのもの(戸籍謄本)とは別の書類で、同じ本籍地の市区町村が出します。それで足りるかも含めて聞いたうえで、取り寄せるなら本籍地の市区町村のウェブサイトで海外からの請求の方法を探し、届くまでの日数を見て申請の日から逆算します。
スマート変更登記は、帰国してから
4行のうち国籍等を除く3行は、国内に住む人にとっては、住所が変わったときに法務局が登記の住所を書き換えるスマート変更登記のための情報として案内されています。海外に住む人は申し出てもその対象にならない、と法務省は書いています。仕組みが日本の住民票の情報を見て動くためです。
10月5日以降に海外に住んだまま申し出た人が、のちに日本へ住所を移しても、それだけでは対象に入りません。移したあとにもう一度申し出れば対象になる、と法務省のQ&Aは答えています。長男が帰国して住所を移したら、そのときにもう一度申し出ます。
法務省「令和8年10月5日以降に所有権の移転の登記を書面で申請する場合の記載例」、法務局の所有権移転登記申請書の記載例(売買〔新旧〕・贈与・相続)、法務省民事局の通達(令和8年9月4日)、法務省「検索用情報の申出について」「住所等変更登記の義務化に関するQ&A」、名古屋法務局「スマート変更登記・検索用情報の申出」、e-Gov法令検索の不動産登記規則(以上、2026年10月15日確認)によります。


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