介護保険の住宅改修20万円を超える補助は実在します。ただし20万円の枠が増えるのではなく、介護保険とは別の事業として置かれています

共通組版のアイキャッチ。左に「聞く一文を、入れ替える」の文字と「介護保険の住宅改修費と、20万円の外側」の小見出し、右の円の中に、文字のない吹き出しが2つと四辺の閉じた縦長の四角。淡い色の吹き出しは四角の左の面に当たって止まっており、朱色の吹き出しは四角の上をこえて右側の余白にいる シニアの家計管理

住宅改修の見積書が20万円を超えたとき、その超えた分を公金で見ている市があります。

愛知県高浜市は、介護保険の住宅改修費とは別に、市の補助を置いています。要介護4・5なら市の補助は30万円で、市自身のページが介護保険の20万円と並べ、合計50万円と示しています。要介護3以下ではこの補助が10万円になり、合計は30万円です。

ただし、どちらも工事費の側の上限枠であって、受け取る額ではありません。市の補助にも、所得に応じて1割から3割の自己負担があります。

そして、増えているのは介護保険の枠ではありません。介護保険の側は20万円のままで、市の補助はその外側に、別に置かれています。

20万円の枠そのものが改めて立つのはどんなときか、という話は前の記事で扱いました。ここから先は、その枠の外側の話です。

愛知県高浜市の住宅改修のページにある表。列は左から自立者(65歳以上)、要支援1・2、要介護1、要介護2、要介護3、要介護4、要介護5。行は3つで、「介護保険制度(給付費)」は自立者が0円、要支援1・2から要介護5までがいずれも20万円。「高浜市独自加算(補助金)」は自立者から要介護3までが10万円、要介護4・5が30万円。「合計」は自立者が10万円、要支援1・2から要介護3までが30万円、要介護4・5が50万円
介護保険の行は、要支援1・2から要介護5まで20万円で平ら。その範囲で数字が動いているのは市の行だけで、合計欄の30万円と50万円の差は、そのまま市の行の差です。表の数字はいずれも工事費の側の上限枠であって、受け取る額ではありません。(愛知県高浜市・2026年8月25日取得)

この置き場所を、国は制度が始まった年に名指ししていました

高浜市はこの住宅改修費の補助を、保険給付の限度額を上げる「上乗せ」ではなく、同市が「横出し」と呼ぶ、介護保険の給付とは別に置いた事業に分類しています。前者、つまりケアプランに使える上限を国基準より上げる仕組みは、同市が2024年4月に終えています。住宅改修費の補助は、後者として続いています。

編集部が作成した図。見出しは「20万円の枠と、その外に置かれた事業」。左の白い箱に「介護保険の住宅改修費」、その下に小さく「上限は20万円」「この額を定めているのは国」。右の緑色の箱に「市が別に置いた事業」、その下に「介護保険の給付とは別建て」「持っている市がある」。2つの箱のあいだに矢印も線もない。右下に「図:ゆたか日和編集部(高浜市・千葉市・川崎市の公表内容と国の通知をもとに作成)」とある
左の箱の額は国が決め、右の箱を置くかどうかは市が決めます。同じ1枚の見積書に、決めている相手が2つあります。あいだに線を引いていないのは、そのつながり方まで市によって違うからです。

この置き方は、高浜市が単独で思いついたものではありません。当時の厚生省は、制度が始まった2000年3月の通知の本文で、20万円を超えて助成したい市町村に向けて、介護保険からの支給を確実に先に立てたうえで、超える分について「地方公共団体の単独事業として助成する旨の調整規定」を、その事業の根拠に書いておくよう案内していました。

厚生労働省のサイトに載っている通知の本文の一段落。「ただし、法に基づく住宅改修費の支給対象となる住宅改修を助成対象とする場合、法に基づく住宅改修費の支給を確実に優先させるためには、これを超える分について地方公共団体の単独事業として助成する旨の調整規定を、当該事業の根拠である条例等に盛り込むことが必要である。」と書かれている
この一文にも「条例」の字は出てきます。ただし盛り込む先として名指しされているのは「当該事業の根拠である条例等」で、別に立てた事業の側です。(厚生労働省のサイトに掲載されている2000年3月の通知・2026年8月25日取得)

同じ文言は、2014年10月に厚生労働省が開いた検討会の参考資料にも、そのまま載っています。

20万円を超える分をどこに置くか。実際の金の流れを辿ると、国が制度の最初の年に書いていた答えも、いま高浜市が出している補助も、どちらも介護保険の給付とは別に立てられた事業に行き着きます。

置き場所ではなく、20万円という額を上げる。条文の上では、そう書くこともできます。さきほどの上乗せはケアプランに使える上限の話でしたが、こちらは住宅改修費そのものの20万円を指しています。市町村は条例で、20万円に代えて、それを超える額を自分の市の限度額にできる。減らすことはできず、上げることだけができる書き方で、要支援の人向けにも同じ規定が置かれています。住宅改修の20万円という額も、法律の条文ではなく、厚生労働大臣が定める告示の数字です。

ただし、この規定で20万円そのものを引き上げている市町村には、今回の探索では当たりませんでした。現行の介護保険条例6件は、全文を「支給限度基準額」で検索していずれも0件で、自治体のページ20あまりと複数の検索語によるウェブ検索を重ねても、実例は出てきません。

全国の市町村を残らず見たわけではないので、どこにも無いとは言えません。この規定を手がかりに探すかぎり、実際に金が出ている側には行き着きませんでした。

条例に無いからといって、その市に補助が無いとは限りません

その別建ての補助は、介護保険の条例には載っていません。同じ6件の条例を、今度は「住宅改修」で検索しても0件でした。限度額が上がっていないというだけでなく、別建ての事業も条例には出てきません。現に補助を出している高浜市の介護保険条例にも、「住宅改修」の語はありません。

厚生労働省が示している介護保険条例の参考例も、限度額の上乗せの条項に「全ての市町村において定める必要がないもの」という印を付けています。同じ印は、市町村特別給付や保健福祉事業の条項にも一律に付いています。どれを条例に書くかは、市町村に委ねられているということです。

手がかりは、事業の名前にあります。千葉市は「高齢者住宅改修費支援サービス事業」、川崎市は「高齢者住宅改造費助成事業」。今回見たかぎりでは、名前に「介護保険」が入っておらず、担当も高齢福祉の側に置かれていました。

用語も混線します。高浜市の分類で見たとおり、「上乗せ」は限度額そのものを上げる仕組みを指す語です。窓口で「上乗せはありますか」と聞くと、探しているものとは別の制度の話が返ってくることがあります。

今回、別建ての助成そのものは4つの市で確認できました。持っている市があるというところまでで、どの市にもあるわけではありません。

介護保険と重なる部分の扱いは、市ごとに別の計算です

名前で辿り着いた先のページには、介護保険との関係に触れた一文が置かれています。その一文が指している中身が、市によって違います。

千葉市は、その工事が介護保険の住宅改修費の支給対象になるときは、介護保険支給対象相当分を最高20万円まで控除する、と書いています。川崎市は、助成の対象をそもそも介護保険の住宅改修以外の工事に限り、対象になる工事の範囲を分けています。冒頭の高浜市だけが、同じ工事に介護保険の20万円と市の補助を並べ、単純に足した合計を自分で示していました。

その4つのうち、併用の書きぶりまで読み取れた市は3つで、3通りに分かれました。別枠が見つかったあとは、差し引かれるのか、対象になる工事が分かれているのか、そのまま足せるのかを確かめます。

川崎市の高齢者住宅改造費助成事業のページ。赤い字で「※必ず事前に御相談ください。(工事着手後に申請された場合は、助成を受けることができません。)」とあり、その下の箇条書きに「改造箇所…浴室、手洗所、居室、玄関、食堂、廊下、階段など(介護保険制度の住宅改修以外の工事)」とある
改造できる場所を並べたあと、この市は括弧ひとつで対象の外側に線を引いています。足せる額が増えるのではなく、対象になる工事が分かれています。相談の時期は、その上の赤い字が工事に取りかかる前と指定しています。(川崎市・2026年4月1日更新、2026年8月25日取得)

確かめる時期は、工事の前です。川崎市は事前の相談を求めていて、工事に取りかかったあとに申請された場合は助成を受けられない、と書いています。先に工事を済ませて、足りなかった分をあとから市の助成に回す、という順序は、こう書いている市では成り立ちません。

先に見た国の案内も、市町村に向けて、介護保険からの支給を確実に先に立たせたうえで超える分を単独事業で見る、という設計を求めるものでした。二つは、はじめから同じ一つの工事の計画の上に載っています。

窓口で口に出す一文は、「条例で限度額を上げていますか」ではありません。「介護保険の20万円とは別に、住宅改修の補助はありますか」です。

前の一文への答えは、限度額を上げているかどうかで閉じます。その市に別の受け皿があるかどうかには届きません。差し替えた一文の答えは、そこにじかに触れます。

工事の発注より先に、その一文を窓口で口に出します。

2026年8月25日時点の法令・通知と、各自治体が同日に公開していた記載によります。本文で名前を挙げた高浜市・千葉市・川崎市のページはいずれも同日に取得したもので、千葉市のページは2025年4月1日更新、川崎市のページは2026年4月1日更新、高浜市の住宅改修のページには更新日の表示がありません。金額はすべて工事費の側の上限枠であって、受け取る額ではありません。高浜市の市独自の補助にも1割から3割の自己負担があり、その割合をどの基準で判定しているかは、同市のページからは分かりませんでした。同市の住宅改修費の補助が続いていることは第9期の計画(計画期間2024〜2026年度)に明記されているもので、次期以降の継続を確認したものではありません。同市が2024年4月に終了したのは区分支給限度基準額の上乗せで、住宅改修費の補助とは別の制度です。条例による上乗せの実例を探した範囲は、現行の介護保険条例6件の全文(練馬区・阿南町・和光市・福岡県介護保険広域連合・さいたま市・山口市)と、前回調査(2026年8月21日)で確認した自治体ページ20超、複数の検索語によるウェブ検索に限られ、全国の市町村を悉皆で調べたものではありません。根拠の特定は次のとおりです。条例による上乗せは介護保険法45条6項・57条6項、20万円は平成12年厚生省告示第35号、高浜市が別建ての事業の根拠として挙げているのは同法115条の49、国の案内は平成12年老企第42号の本文および平成26年度の検討会参考資料1、条例の参考例は介護保険最新情報Vol.910です。老企第42号のその後の改正・廃止の有無は今回確認していません。高浜市の住宅改修費の補助が条例以外のどのレベルの例規で運用されているかも確認できておらず、確認したのは同市の介護保険条例に「住宅改修」の記載が無いことまでです。各市への問い合わせは行っておらず、公開されているページとPDFを読んだ範囲の観察です。所得制限や利用者負担の割合、対象になる工事の範囲、申請の様式と流れを、市ごとに比べてはいません。

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