一つの住戸の面積は、壁のどこに線を引くかで変わります。壁には厚みがあるからです。
建物の登記の床面積をどこで測るかは、規則の一文が決めています。その一文の中に、線の位置は二つ書かれています。原則は壁の中心線。ただし区分建物——分譲マンションの一住戸のような、一棟の中の独立した一部分は、括弧に入れて外に出され、壁の内側線で測られます。

同じ一枚の壁に、線を引ける位置が二つあります。同じ住戸の「床面積」「専有面積」が書類によって違う値になる原因は、ここにあります。どちらかが誤記なのでも、片方が概算なのでもありません。
パンフレットの数字と登記の数字は、違うことを前提にして作られている
物件のパンフレットに載っている専有面積は、壁の中心線で測った数字です。だからあとで登記事項証明書を取ると、そこには小さい数字が載っています。
これは業界が黙っていた差ではありません。不動産の表示に関する公正競争規約の施行規則は、広告に必要な表示事項の一覧に、専有面積が壁心面積である旨と、登記面積はこれより少ない旨を挙げています。二つの数字が違うことも、どちらが小さいかも、告知すべき事項として先に決められています。
手元に違う数字が二つあること自体は、正常な状態です。誰かが間違えたわけでも、確認を怠ったわけでもありません。
市町村が判定に使う数字は、廊下と階段の分を足したところにある
市町村が減額の判定に使う床面積は、その住戸の専有部分だけの数字ではありません。廊下、階段、エレベーターホールといった共用部分の床面積を、専有部分の広さの割合で分けて、各住戸にその分を足します。

足したあとの面積で床面積の要件を判定する、と書いている自治体のページがあります。改正後の基準を載せたページに、マンションについての注記としてそう書かれています。

この足し算を命じている条文は、今回は見つかっていません。減額の床面積要件を定めた政令の条文には、共用部分という語も、按分という語も、一度も出てきません。市町村のページには足し算が書かれていて、ある市は「当市では実務上」と自分で断っています。条文が命じている計算ではなく、市町村の実務としてそうなっている計算です。
専有部分をどこまでで測るのかについては、説明が一つに揃っていません。ただ、そこがどちらであっても、足し算は加える方向にしか働きません。判定に使われる床面積が、登記事項証明書に載っている数字より小さくなることは、構造上考えにくい。
同じ40㎡の線に、買主と市町村は別の数字を当てている
ここで数字が出てきます。減額に入れるかどうかは、床面積の下の線で決まります。その線が原則40㎡です。足りなければ、減額が小さくなるのではなく、無くなります。
市町村がこの線に当てるのは、専有部分に共用部分を足した数字です。買主が手元の紙を見て当てているのは、登記の数字です。同じ一本の線に、別々の数字が当たっています。
だから、登記事項証明書の床面積が40㎡を割っている住戸でも、市町村が当てる数字は40㎡以上でありえます。「40㎡未満だから対象外」という自分の演算は、そこで壊れています。
逆向きも同じ重さで書いておきます。買主の手元にある紙は、登記事項証明書だけではありません。パンフレットの数字が40㎡を超えていても、それで対象内が決まるわけではありません。手元の紙どうしが食い違うのは壁の厚みです。登記の数字と判定の数字のほうは、そこに共用部分が足されるぶん、判定の数字が大きい側になります。同じ理由ではないので、パンフレットの数字には同じことが言えません。
その数字を、契約前に請求できる相手がいない
固定資産課税台帳は、誰でも見られる帳簿ではありません。閲覧と記載事項の証明を求められる人は、条文の表で四つに区切られています。固定資産税の納税義務者、土地の賃借権などを持つ人、家屋の賃借権などを持つ人、そして固定資産の処分をする権利を有する者として総務省令で定める者。この四つに、これから買おうとしている人を名指しする文言はありません。

もう一つの縦覧は、自分の評価額を近隣と比べるための制度で、対象はすでにその市町村で固定資産税を納めている人です。期間も毎年4月1日から始まる短いあいだに限られています。どちらも、これから買う人のために作られた制度ではありません。
完成して間もない住戸では、判定の数字がまだ作られていないこともあります。
線の近くにいるなら、売主に課税明細を見せてもらえないか頼む、住戸のある市町村の資産税の担当に聞く、という二つはできます。どちらも買主の権利ではなく頼みごとで、その住戸の数字が返ってくるとはかぎりません。
線が引かれていない住戸と、線が50㎡のままの区域
この線は、2026年4月1日以後に新築された住戸に引かれています。それより前に新築された住戸には、改正前の基準が当たり続けます。その基準では下の線がもっと高いところにあって、40㎡という線はそもそも引かれていませんでした。この旧基準も含めて、ここまで書いてきたのは、自分で住むために買う住戸の話です。
分けるのは、買った日でも、契約の日でもありません。新築された日です。2026年の春ごろに完成した住戸で、その日付が4月1日の手前か後ろかを、自分で決めないでください。新築された日として扱われる日は、市町村の側で決まります。
線の位置そのものが、場所によって違うところもあります。東京都特別区では、特定都市再生緊急整備地域という区域の中にある住戸について、自分で住む住宅の下限が50㎡のまま据え置かれています。自分の見ている住戸がその区域に入るかどうかは、都税事務所に聞きます。
認定長期優良住宅として買う場合も、床面積の要件は同じ数字です。そして入口を通ったあと、その減額が何年度分残るかは、別の数え方で決まります。
手元の数字でできるのは、線から近いか遠いかを見ることまで
線から遠い住戸なら、手元の数字で足ります。話が変わるのは、線の近くにいる住戸です。
近いと分かったあと、そこから先を手元で埋める方法はありません。頼める相手はいますが、返ってくるかどうかは、頼んだ側では決まりません。
減額そのものは、住戸を選び直す理由にも、値引きの材料にもなりません。動くのは、資金計画に書いた一行だけです。いま消すか、判定されていない行として残すか。
手元の数字は、線からの距離までしか教えません。その距離が近いことが、いまその一行を消さない理由になります。
2026年9月7日に確認した現行の条文と、同じ日に公開されていた自治体のページ、および不動産業界の公正競争規約によります。区分建物の登記の床面積が壁の内側線で、それ以外の建物が中心線で測られることは、不動産登記規則の条文で確かめました。広告の専有面積が壁心であることと、登記面積はこれより少ない旨を表示させる定めは、公正競争規約の施行規則で確かめました。マンションの床面積の要件を、専有部分に共用部分を按分して足した面積で判定すると書いている自治体のページは、改正後の内容として二つの市で確認しています。下限が40㎡であること、東京都特別区の特定都市再生緊急整備地域の区域内で貸家以外が50㎡に据え置かれていることは、区分所有の住戸について定めた号の条文で確かめました。この基準が2026年4月1日以後に新築された住戸に適用されることは、改正政令の附則で確かめています。固定資産課税台帳の閲覧と証明書の交付を請求できる者が四つに区切られていること、縦覧が固定資産税の納税者のための、毎年4月に始まる制度であることも、条文で確かめました。
確かめられていないことも書いておきます。専有部分に共用部分を足すという計算そのものを定めた条文は、今回は見つかっていません。減額の床面積要件を定めた政令の条文にも、共用部分という語も按分という語も出てきません。ある市が「当市では実務上」と自ら書いているとおり、これは市町村の運用として存在しています。専有部分をどこまでで測るかについても、説明が揃っていません。本文が大小の向きだけを書いて、差が何㎡になるかを書いていないのはこのためです。閲覧を請求できる四つ目の区分(総務省令で定める者)が誰を指すのかも、規則の中には見つけられませんでした。完成した住戸の課税床面積がいつ確定するのかについても、全国に共通する基準は見つかっていません。
この記事の外に置いたものもあります。減額される額と税額の計算には触れていません。床面積の上限の側で何が変わったかにも触れていません。重要事項説明で床面積がどう扱われるかは、法定の列挙に無いという条文の確認までしかできていないので扱っていません。戸建ての床面積が書類によって食い違う理由、貸家として持つ場合の扱いも、この記事では扱っていません。ここで見た自治体のページはどれも2026年9月7日の表示で、その後に書き換わっている可能性があります。

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