母が昭和の終わりに買った家を、長男が相続して売るとします。登記簿にある母の住所は、買う前に住んでいたアパートのままです。母は令和7年にこの家で亡くなり、本籍は別の市にあります。相続人は長男1人で話がまとまっています。
この家は、母の名義のままでは売れません。法務省は、所有者が亡くなった不動産を売るときは、その前に相続登記をして名義を相続人へ移す必要があると説明しています。相続人申告登記を済ませただけの状態でも売れません。
法務局の売買の記載例(令和8年10月5日以降に申請する場合)の注4には、売主の住所が登記記録と一致していなければ、事前に変更の登記が必要だとあります。

売主本人が生きていて、法務局からスマート変更登記の通知が届いた場合は、売る前の住所変更登記の記事で扱っています。
亡き母の家では、注4は相続登記で登記簿に載る長男の住所にかかります。決済までに長男が引っ越す予定があれば、その住所がずれて同じ注に当たると考えられるので、相続登記を出す前に司法書士と買主側へ伝えておきます。母の古い住所は、その前の相続登記で出てきます。
母の古い住所が出てくる場所
相続登記の記載例では、申請人の欄に「相続人(被相続人 ○○)」とあり、亡くなった人は名前だけで出てきます。
法務局の相続登記の手引き(令和8年4月版)は、登記簿の住所が戸籍の本籍と違うとき、登記簿の所有者と戸籍の上の亡くなった人が同一人だと示すために、登記簿の住所が載った住民票の除票や戸籍の附票などを添えるよう書いています。記載例の注も同じ書類を挙げています。手引きは遺産分割、法定相続、相続人への遺贈の3冊がありますが、亡くなった人の住所を書き換える登記を手順に置いた箇所は、どれにもありません。

2枚の申請書は、出し方が違います。売買は売主と買主がそろって出す申請で、登記簿の住所と照らされる相手は売主です。相続登記は相続人の側だけで出す申請で、手放す側として申請に加わる人がいません。
司法書士の見積もりに母の住所を書き換える登記が入っていたら、何のための登記かを聞いてください。母の住所を直すためだけなら、手引きの手順は書類を添える形だと伝えて、外せるかを確かめます。
除票か附票に、アパートの住所を探す
まず、売る土地と建物の登記事項証明書で母の住所を確かめます。この例ではアパートの住所で、本籍とも最後の住所とも違います。
取りに行く紙は、アパートがどこにあったかで決まります。アパートが別の市町村にあって、そこから直接この家へ移ったのなら、この家の住所地で取る母の住民票の除票に、前の住所としてアパートが載る欄があります。同じ市の中で移っていた場合は、前の住所が除票に載るとは限らないので、母の本籍がある市に戸籍の附票を請求します。附票は本籍ごとに作られ、その戸籍にいた間の住所の移り変わりが載ります。
紙が届いたら、アパートの住所が登記簿と同じ書き方で載っているかを見ます。除票に載っていなければ、附票も請求します。

昭和の住所は、今の附票に載っていないことがあります。今の附票には、いまの本籍にした日より後の住所しか載りません(千葉市の案内)。戸籍がコンピュータ化された市では、今の附票は改製したときの住所から始まり、それより前の附票は廃棄されていることもあります(京都市の案内)。
母が結婚や転籍で本籍を移していれば、前の本籍地にも附票を請求します。アパートの住所が載った除票か附票が手に入れば、それを添えて相続登記に進めます。どこからも出てこなければ、相続登記を出す前に、この家のある地域の法務局に相談します。
2026年10月9日時点の法務省の相続登記のQ&A、法務局の相続登記の手引き(令和8年4月版)、相続登記と売買の記載例(令和8年10月5日以降に申請する場合)、法務省の法定相続情報証明制度の案内、千葉市・京都市の戸籍の附票の案内によります。

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