補聴器の医療費控除、書類代のほうが高くつくことがあります

書類とコインを右に置いた共通組版のヒーロー。文字は記事の一行、モチーフは医師に書いてもらう書類 シニアの家計管理

補聴器を医療費控除に使うには、耳鼻科で書いてもらう書類が要ります。

この書類、保険が効きません。全額自費です。

そして値段は医院ごとにばらばらで、1,500円のところもあれば、5,500円のところもある。

にしおぎ耳鼻咽喉科クリニックの治療費用表の一部。診断書費用(簡易なもの)3,300円、診断書費用(複雑なもの)5,500円、補聴器適合に関する診療情報提供書費用5,500円が並んでいる
書類そのものは学会の様式です。違うのは値段だけで、この医院では複雑な診断書と同じ棚に置かれています。

受診料と合わせると、手続きにかかる実費はだいたい4,000円前後。

安い補聴器だと、戻ってくる税金がこの4,000円に届きません。

効いているのは、収入だけではありません

実は、書類を作っている学会自身が「患者負担がかえって増えることもある」と書いています。

日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会Q&Aの質問22の回答全文。この書類は保険診療の診療報酬の対象にならず、一般診断書として文書料を請求するか否かとその金額設定は各施設の判断によるが、患者の収入によっては所得税の控除額より文書料が高くなり患者負担がかえって増えることもある、と書かれている。末尾に2023年9月記載更新の注記
値段は各施設が決める、と書いた同じ回答が、その値段のせいで患者が損をしうるとも書いています。

ただ、学会が挙げているのは収入です。収入だけでは決まりません。もう一つ大きいのが、その年にほかの医療費がどれだけあったかです。

分かれ目は、だいたい13万円

ここからは、年金収入が310万円くらいのひとり暮らしの人を例にします。

医療費控除は、その年の医療費のうち10万円を超えた分が対象になります。最初の10万円は、どの医療費だろうと引かれてしまう。年金収入がこれより少ない人は、引かれる額も10万円より小さくなります。

なので、その年に補聴器しか医療費がない人は、まず10万円を埋めるところから始まります。

このとき元が取れるのは、だいたい13万円あたりから

ところが、その年すでに入院や手術や歯の治療で10万円を超えていた人は、話が変わります。10万円はもう埋まっているので、補聴器の代金がまるごと対象になる。

こちらは3万円くらいの補聴器でも元が取れます。

同じ人が、同じ書類を、同じ値段で頼んでも、その年しだいで4倍以上ちがう。

だから、予約の電話で聞いてください

やることは一つだけです。

耳鼻科を予約するとき、「補聴器の診療情報提供書、文書料はいくらですか」と聞く。

それだけで、自分の分かれ目が決まります。

もうひとつ迷いどころがあって、その年の医療費が固まるのは12月です。ところがこの書類は、買う前でないと書いてもらえません。あとから「やっぱり」は効きません。

なので、迷ったら頼んでおくほうが安全です。頼まずに10万円を超えてしまった場合は取り返せませんが、頼んで超えなかった場合の損は4,000円で止まります。

買う時期を決めるのは聞こえのほうです。税のほうで決めていいのは、その一台について書類を頼むかどうかだけ。

2026年8月時点。金額は年金収入310万円(総所得金額等200万円)・ひとり暮らし・年金収入だけの場合の目安です。総所得金額等が200万円に満たない人は、差し引かれるのが10万円ではなく総所得金額等の5%になるため、分かれ目はこれより下がります。窓口負担の割合でも前後します。文書料の1,500〜5,500円は、料金をサイトに公開している6つの医療機関を調べた範囲です。

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