登記簿の住所が前の市のままの土地。今から無料で申し出ても書き換わるのは令和9年度以降、今直すなら1個1,000円

共通組版のアイキャッチ。左に「住所欄を書くのは、法務局か、自分か」の文字と「引っ越し前に買った土地と、住所変更登記」の小見出し。右の濃い緑の円の中に、文字のない図形。横長の生成り色の記入欄があり、左端に空の見出しマス、右に罫線が1本。生成り色の鉛筆が左上から先を欄に下ろし、短い波線を書いている。その右上では朱色の万年筆が欄の上に浮いたまま、ペン先から欄へ点線だけが垂れている シニアの家計管理

ある土地の登記簿の所有者の欄に、市Aの住所が一行で書かれています。持ち主は市Aに住んでいた頃にこの土地を1筆(1区画)買い、2026年4月より前に別の市である市Bへ引っ越して、今もそこで暮らしています。土地の上に本人名義の建物はありません。住所を変える登記も、法務局への申出も、まだ何も出していません。

この人が今日、無料の「検索用情報の申出」を出しても、この一行は今日は1文字も変わりません。申出は、法務局が住民基本台帳ネットワークで今の住所を確かめ、本人の了解を取ったうえで登記簿を書き換える仕組み(法務省はスマート変更登記と呼んでいます)に乗るための届けです。申出より前に引っ越していた人も対象になります。ただ、書き換えは法務省が年度ごとに決めた順番で回ってきて、今から出す分は令和9年度以降。いつになるかは、まだ決まっていません。

この一行を読むのは、たとえば相続のときに子が取る所有不動産記録証明書です。亡くなった人(この例なら持ち主本人)の名義の不動産を全国から一覧にする証明書ですが、法務局が探すのは請求書に書かれた氏名と住所で、登記簿に別の住所で記録されている不動産は一覧に載らない、と法務省自身が注意書きしています。

住所は、市区町村までそろうか、末尾5文字がそろうかのどちらかで一致になります。子が最後の住所である市Bで探せば、市Aの住所のまま登記された土地は市区町村がそろわず、末尾5文字がたまたま重ならないかぎり当たらない。このルールから編集部はそう読みます。

検索用情報には生年月日やメールアドレスも入ります。所有不動産記録証明について法務省のページ、パンフレット、法務局向けの通達の3点を見た範囲では、「検索用情報」という語は一度も出てきません。申出が子の一覧に届く道として資料から読めるのは、登記簿の住所そのものが書き換わることだけです。子の側で旧住所も条件に足す方法は所有不動産記録証明書の記事で扱いましたが、一行のほうの書き換えを動かせるのは持ち主本人です。

無料の申出で、書き換えを法務局に任せる

今から出す分が令和9年度以降になるのは、令和8年度の書き換えの対象が、令和8年3月31日までに法務局で登録が完了した不動産に限られているからです。この線引きが書かれているのは、確かめた範囲では法務省のスマート変更登記のページとQ&Aだけでした。

法務省「スマート変更登記について」のページの一部。太字で「令和8年度のスマート変更登記の対象者は、令和8年3月31日までに法務局で検索用情報の登録が完了した方です。」、続いて複数の不動産のうち3月31日までに登録が完了した不動産だけが対象になる旨、太字で「令和8年度のスマート変更登記の対象となる方には、令和8年12月中旬以降、順次、意思確認通知をお送りします。」、最後に「令和9年度以降の職権による住所等変更登記の対象者や意思確認通知の送付時期については、決まり次第改めて本ページでお知らせします。」
今年度の書き換えに乗るかを決めたのは、申し出た日ではなく3月31日までに登録が終わっていたかどうかでした。2026年10月に出す分が入る令和9年度以降は、この最後の一文のまま日付がありません(2026年10月3日確認)。

申出は、Webブラウザからでも申出書の提出でもでき、費用はかかりません。住所の欄には、登記簿の市Aではなく今の市Bの住所を書きます。

順番が回ってくると、法務局から「登記簿の住所を今の住所に変えてよいか」を尋ねる意思確認の通知が届き、回答の期限は1か月です。書き換えを断ったり期限内に答えなかったりすると、そのこと自体が、法務局から登記を促す催告のきっかけとして法務省の通達に挙がっています。

待っている間にも、期限はあります。2026年4月より前の引っ越しでも住所を変える登記の義務の対象で、期限は令和10年3月31日(令和9年度の最終日)。順番がそれまでに回ってくるのかは、法務省はまだ書いていません。怠ると5万円以下の過料の対象ですが、その前には必ず書留で、先ほどの催告が届き、法務省は、申し出たのにまだ書き換えが来ていない状態を、正当な理由として認める場合の例の先頭に挙げています。ただし例は「一般に」認めるというもので、例に当たれば過料にならないと約束する書き方ではありません。

法務省「住所等変更登記の義務化について」のページの一部。「義務の履行期間内において、以下のような事情が認められる場合には、それをもって一般に『正当な理由』があると認めることとしています。」「もっとも、これらに該当しない場合においても、個別の事案における具体的な事項に応じて『正当な理由』を判断することとしています。」に続き、「(1) 検索用情報の申出又は会社法人等番号の登記がされているが、登記官の職権による住所等変更登記の手続がされていない場合」
並ぶ5つの例のうち、申し出て待っている状態は一番上に置かれています。

選ぶ基準は、登記簿の住所が市Aのままの期間がしばらく続いてもかまわないかどうかです。

1個1,000円で、自分で今の住所に直す

法務省は、書き換えの時期を個別に早めることはできず、急ぐなら自分で住所変更の登記を申請するよう案内しています。登記簿を今日の住所に今直す公式の道は、これだけです。土地を売る予定があるなど急ぐ事情があるなら、こちらしかありません。

要るのは、自分で作る申請書と、登記簿の住所(市A)と今の住所(市B)、移った日が載った住民票の写しです。引っ越しが2回以上あって住民票でつながりが示せなければ、戸籍の附票の写しを使います。

登録免許税は不動産1個につき1,000円で、この例は土地1筆なので1,000円です。建物もあれば、1個ごとに1,000円が加わります。住民票などの発行手数料は市区町村ごとに違います。

「登記簿の住所欄が市Bに変わる時期」という見出しの図。上の帯「2026年10月に無料の申出だけを出す」は、令和9年度の始まりの線まで「市Aのまま」、そこから点線の枠で「時期未定」、その先が緑の「市B」。下の帯「2026年10月に自分で住所変更登記を申請する」は、「申請の登記が完了」の線までが「市A」、そこから先がすべて緑の「市B」。注記に「横の長さは、期間の長さを表していません」
この図に描いた範囲で二つの選び方が分かれるのは、住所欄が市Bになる時期だけです。上の帯の点線は、法務省が日付を出すまで右端が決まりません。

自分で直しても、検索用情報の申出は別に出せます。

自分で直した住所は、次の引っ越しでまた古くなる

最初の書き換えのあとも、法務局は住民基本台帳ネットワークに照会して、その時点の住所を書き込みます。照会は少なくとも2年に1回程度くり返されます。照会のあとに引っ越していれば、その新しい住所へは次の回で書き換えてもらえる仕組みです。

自分で申請した登記は、申請した日の住所で止まります。市Bからさらに引っ越せば、住所欄はまた古い住所になります。この先の引っ越しにも法務局に追いついてもらうには、検索用情報の申出が別に要ります。住所変更の登記の申請書に書き添えることはできず、申請書とは別の届けです。

1,000円の登記が届くのは、今日の住所まで。申出が届くのは、この先の住所までです。ただし後者は、時期を法務省の日程に預けます。

2026年10月3日時点の法務省の案内(スマート変更登記のページは令和8年9月30日更新)と、法務局の住所変更登記の手続案内によります。

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