たとえば、母が亡くなり、母名義の実家の建物を取り壊した兄妹がいるとします。建物と土地は同じ登記所(法務局やその支局・出張所)の管轄です。建物の滅失登記、つまり取り壊した建物の登記を閉じる手続は、兄が郵送で出します。土地を誰の名義にするかは、まだ妹と決まっていません。
兄は、先に法定相続情報一覧図を作ろうと考えています。母の戸籍の束を法務局に出して確認を受け、相続関係を紙1枚で証明してもらうもので、その写しを束の代わりに使えます。これがあれば、滅失登記と土地の相続登記で束を二度出さずに済む、と聞いたのです。
この2つの登記のためなら、一覧図から始めなくてかまいません。先に答えておく問いは1つ、土地の相続登記を滅失登記と同時に出せるか。名義が決まっていない兄は、いまは出せない側です。どちらの側でも、戸籍を集めるのは1回です。集めるのは母の出生から死亡までの戸籍と、兄妹2人の戸籍。土地の相続登記に使うこの一式をそろえておけば、滅失登記にも付けられます。問いの答えは、その束を2つ目の登記へどう持ち越すかを変えます。
土地の名義が決まっていれば、2つを同時に出す
もし名義が決まり、土地の側の書類(遺産分割協議書など)もそろっていれば、滅失登記と土地の相続登記を同じ登記所へ同時に出せます。同じ登記所に同時に出す申請どうしなら、共通する添付書類は片方に付ければ足りる、と登記の規則にあります。戸籍の束は片方の申請に付け、もう片方の申請書には「一方の申請に付けた」と書き添えます。

決まっていなければ、滅失登記の封筒にコピーを足す
兄は名義の話し合いを待たずに、滅失登記を先に出します。ここからは紙の申請書を郵送や窓口で出す場合の手順です。申請書と建物滅失証明書を入れる郵送の封筒に、束の戸籍1通ごとのコピーを足します。コピーに「原本に相違ありません」と書いて名前と印を入れ、原本と一緒に入れて、原本の返却を求めます。登記が終われば原本が戻り、その束を土地の相続登記に回せます。
長崎地方法務局の滅失登記のチェックリストは、この手続について「なお、上記手続をしていない書類は、申請後に原本を返却することはできません。」と注意しています。

原本が戻るまで、その束は手元にありません。同じチェックリストは返送を書留(レターパックプラスを含む)に限っているので、返信用の封筒と切手も同封しておきます。土地の相続登記には期限があり、名義が決まるまでの手当ては別の記事で扱いました。
コピーを作る手間を省こうと調べると、相続登記の手引きに「相続関係説明図を付ければ戸籍のコピーは要らない」という近道が出てきます。相続関係説明図は相続人の関係を書いて申請書に添える図で、一覧図とは別物です。確かめた法務局の資料では、この扱いは相続登記の申請の説明の中にしか出てきません。

滅失登記のチェックリストは、コピーを付ける方式を案内しています。兄の封筒には、コピーを入れておきます。
一覧図は、同じ束から作る
一覧図を作るときに法務局へ出すのも、この束です。束は一覧図と一緒に返されますが、集める手間は減りません。すでに一覧図を作ってあるなら、平成29年の法務省の通達が、相続人が出す滅失登記でも一覧図の写しを戸籍の代わりにできる扱いを挙げています。一覧図の写しは必要な通数を無料で受け取れるので、銀行の預金や年金など登記以外の窓口にも並行して出すなら、束1つを順に回さずに済みます。
一覧図の申出から始めても、兄が最初にすることはこの束集めで、2つの登記のためなら、それを紙1枚に替える理由は残りません。作るかどうかは、母の預金や年金の手続先を書き出し、その数を見て決めます。
2026年10月5日時点の不動産登記規則、平成29年の法務省の通達、法務局の案内・チェックリストによります。

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