亡くなった父の土地に、登記簿の◇は付くか。法務局の仕事がその名前を通るかで決まる

共通組版のアイキャッチ。左に「◇が付くのは、法務局の仕事が通った名前」の文字と「親の名義のままの土地と、死亡の符号」の小見出し。右の濃い緑の円の中に、文字のない図形。棚の上に縦長の名札が5枚並び、右上から斜めに下を向いた生成り色の懐中電灯の光が、真ん中の1枚だけを照らしている。照らされた札は生成り色で、朱色の菱形の印が一つある。残りの4枚は暗い輪郭だけで、印はない シニアの家計管理

登記簿の名義人の名前に付く◇は、その人が亡くなったことを示す印です。法務局が自分の仕事の途中で、戸籍などで死亡(失踪宣告を含む)を確かめた名前にだけ付けられます。

法務省のページによると、付け始めるのは、10月13日以降に出された登記申請の審査の中と、12月下旬以降、法務局が住基ネットで住民票の情報を確かめる照会の中です。この記事の時点(2026年10月7日)では、どちらもまだ始まっていません。

父が平成15年に買い、その年に父の名義で登記した実家の土地で考えます。父は国内に住んでいて、令和8年の春に亡くなりました。子は、父が亡くなったことも、この土地を相続したことも、その春に知りました。名義は父のままで、相続登記も、相続人申告登記(相続人であることを法務局に申し出る登記)もまだです。父は、検索用情報(法務局が住基ネットで名義人を照会するために登録しておく情報)を申し出ていません。

12月下旬に始まる住基ネットの照会からの◇は、この父の名前には付きません。

法務省のページ「スマート変更登記について」の一節。見出しは「所有権の名義人の死亡についての符号の表示について」。令和8年12月下旬以降、スマート変更登記の手続の過程で法務局が住基ネットに照会した際に死亡等を把握した場合に符号の表示を行う制度が開始されること、令和8年10月13日以降にされた登記の申請等の審査の過程で、登記名義人となる方の死亡等を登記官が確認した場合にも符号の表示を行うことがあることが書かれている
12月下旬の文も10月13日の文も、法務局が死亡を「把握した場合」「確認した場合」として書かれています。起点は亡くなった日ではなく、法務局が知った時点の側に置かれています(法務省「スマート変更登記について」令和8年9月30日更新、2026年10月7日確認)。

住基ネットの照会は、名義人になった日付で見当がつく

◇が付く場面として、法務省の通達は5つを挙げています。冒頭の2つ、登記申請の審査と住基ネットの照会も、この5つに入っています。相続人が外から見当をつけられるのは、住基ネットの照会だけです。

この照会が届くのは、検索用情報が登録されていて、国内に住所がある名義人だけです。

検索用情報は、令和7年4月21日以降に名義人になった人なら、原則としてそのときの登記の申請で申し出ています。それより前から名義人だった人は、自分で申し出た場合だけです。

手がかりは、父が名義人になった登記の受付日です。登記事項証明書の、その登記の行の受付欄に書いてあります。

法務省の通達の別紙にある登記記録例のうち、右の2列。上の行は受付年月日の欄に「令和何年何月何日 第何号」、権利者その他の事項の欄に「原因 令和何年何月何日売買 所有者 何市何町何番地 甲 某」。下の行は受付年月日の欄が「余白」で、権利者その他の事項の欄に「甲 某 ◇ 令和何年何月何日付記」
上の行の受付欄には、売買で名義人になった登記の受付の日付と番号が入ります。◇の行の同じ欄は「余白」です。◇は申請を受け付けて書く行ではなく、法務局が書き足す行だからです。(法務省の通達の別紙にある記録例から右の2列を切り出し、2026年10月7日確認)。

この家は受付日が平成15年で、父は自分で申し出てもいません。受付日が令和7年4月21日以降の名義人なら、原則として申出がされていて、この照会で◇が付くことがあります。照会の日程は検索用情報の申し出の記事にあります。

残りの4つのうち、2つは法務局の事業です。長く相続登記がされていない土地の調査と、地図づくりです。

3つ目は、ほかの機関から法務局に情報が届いたときです。

4つ目が、10月13日から始まる登記申請の審査です。ただし◇が付くのは、その登記で新たに名義人になる人です。すでに名義人の父には当たりません。

父の名前に付きうるのは、法務局の2つの事業か、ほかの機関からの情報がこの土地や父に当たったときです。どれも法務局やほかの機関の側の動きで決まるので、この家の土地にも◇が付くことはある、としか言えません。令和3年の国会で、法務大臣は、すべての登記に死亡を反映できる時期は見通せないと答えています。

◇が無いことは、名義人が生きている証拠にも、相続の手続きが何も済んでいない証拠にもなりません。通達は、相続人申告登記がされている名義人には、◇を付けなくてよいとしています。

「◇が付くことがある5つの場面」の図。左の根は2つ。緑の根「受付日で見当がつく道(親が名義人になった登記の受付日を見る)」からは、緑の箱「住基ネットへの照会で、死亡が分かったとき(検索用情報が登録された、国内に住む名義人だけ)」が1つ。白い根「外から見当がつかない道(法務局の事業や、ほかの人の申請・ほかの機関に当たったときだけ)」からは4つ。「長く相続登記がされていない土地の、法務局の調査」「法務局の地図づくり」「登記申請の審査で、その登記で名義人になる人の死亡が分かったとき」「ほかの機関から、法務局に情報が届いたとき」。下に赤字で「規則と通達が挙げる場面に、家族の申し出は入っていない」
5つを並べてみると、家族の側から◇を付けてもらう入口は、この中にありません。

相続登記の期限は、相続の開始と土地の取得を知った日から数える

◇を付ける決まりにも、その運用を定めた通達にも、相続人に知らせる規定や、相続登記の期限や催告(法務局が相続人に相続登記の申請を促す通知)につなげる規定は見当たりません。

催告を出すきっかけについて法務省が出している令和5年の取扱いにも、◇は挙げられていません。

相続登記の期限は今までどおり、相続の開始を知り、かつ、その土地を取得したことを知った日から3年です。この家では、子がどちらも令和8年の春に知っているので、◇が付くのを待たずに、令和11年の春までに相続登記を済ませます。遺産分割がまとまらないうちは、相続人申告登記をしておけば、この期限の義務は果たしたことになります。

2026年10月7日時点の法務省のスマート変更登記の案内、法務省の通達、不動産登記の法令、国会の会議録によります。

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