売る予定の土地に、スマート変更登記の通知が届いたら。「希望する」と答える前に決済日と並べる

共通組版のアイキャッチ。左に「先に分かる日付は、決済の予定日のほう」の文字と「売る予定の土地と、スマート変更登記の意思確認通知」の小見出し。右の濃い緑の円の中に、文字のない図形。左に上部にリングが2つ付いた生成り色の卓上カレンダーが1枚あり、マス目のうち1マスだけが朱色に塗られ、朱色の丸で囲まれている。右に目盛りのない砂時計が1つ立ち、上の砂が細い筋になって下へ落ちている シニアの家計管理

法務省が住所変更登記の義務化について出しているQ&Aに、売買の場面を想定した設問があります。売買の登記を頼まれた司法書士が、その土地の登記事項証明書(登記簿の中身を法務局が証明する書類)を取ろうとしたら「登記手続中」で取れなかった。依頼者に聞くと、法務局から届いた通知にもう答えていた、という場面です。この通知が届き始めるのは令和8年12月中旬以降で、今はまだ設問の中の出来事です。

法務省『住所等変更登記の義務化に関するQ&A』のQ9の設問文。「(Q9)私は司法書士をしていますが、売買による所有権移転の申請の委任を受けたので、対象となる不動産の登記事項証明書をオンラインで取得しようとしたところ、登記手続中とのことで、登記事項証明書を取得できませんでした。依頼者に聞くと、数日前に法務局から意思確認通知が届いたので、回答したとのことです。」
通知が届いたのは「数日前」。そのあいだに依頼者が答え、司法書士がオンラインで請求したときには、もう「登記手続中」でした(法務省「住所等変更登記の義務化に関するQ&A」、2026年10月6日確認)。

依頼者が答えたのは「意思確認通知」です。検索用情報(住所の変化を法務局が住基ネットで調べるための情報)を申し出てあり、その照会で住所の変化が分かった人に、登記簿の住所を法務局のほうで直す「スマート変更登記」を希望するかを尋ねてきます。

「希望する」と答えると、その登記が終わるまで、対象の不動産の証明書は取れません。終わるまでの日数は、一般には公表されていません。

自宅と実家の土地の両方について検索用情報を申し出て、法務局での登録が令和8年3月31日までに済んでいる人で考えます。どちらも登記簿の住所は昔のままです。実家の土地は来年の春ごろに売るつもりで、仲介の会社と話を始めています。申し出た日ではなく、法務局で登録が済んだ日で年度が分かれます。この人には令和8年12月中旬以降に通知が届き、1か月以内の回答を求められます。令和8年4月1日以降に登録が済んだ人や、これから検索用情報を申し出る人の通知は令和9年度以降で、時期はまだ決まっていません。

証明書が取れなくなるのは、答えた日ではない

回答を受けた法務局は、内容を確かめてから、基本的には翌開庁日以降に、それぞれの不動産を管轄する法務局へ知らせます。証明書が取れなくなるのは、管轄の法務局がその知らせを受け付けたときからです。

「希望する」と答えたあとは、その答えを取り消して手続をやめてもらうことはできず、証明書が取れないまま登記の完了を待つことになります。

法務省Q&AのA10の第1段落。「(A10)法務局からの意思確認通知に対して、スマート変更登記(職権による住所等変更登記)を希望する旨の回答をされた場合、スマート変更登記の手続が完了するまで、手続を中断又は中止することはできません。」
「中断」と「中止」が並んでいます。やめてもらうことだけでなく、途中でしばらく待ってもらうこともできない、という書き方です(法務省Q&A・A10、2026年10月6日確認)。

通知は不動産ごとに別々には来ず、この人なら自宅と実家の土地の分がまとめて1通で届きます。自宅の住所を直してもらうつもりで開いた通知に、売る予定の土地の分も入っています。売る土地の分だけを外して答えられるかは、確かめた資料には書かれていません。

編集部作成の図「『希望する』と答えてから、証明書がまた取れるまで」。縦に5段。1「意思確認通知が届く」その年度の対象になった不動産の分が、まとめて1通で。2「『希望する』と回答する」通知から1か月以内に。3「管轄の法務局が受け付ける」回答の確認を経て、基本的には翌開庁日以降。4(緑で強調)「登記事項証明書が取れない」中断も中止もできない。完了までの日数は公表されていない。5「登記が完了する」新しい住所が入った証明書が取れる。下に朱で「決済の予定日が4に重なると、その日は証明書が取れない」
手続はこの順に進みます。読者の手で決められるのは2の手前まで。3から先は法務局の側で進み、4の終わりも向こうが決めます。

申し出てあっても、登記簿の住所は古いまま

司法書士が決済の前に証明書で確かめることの一つが、売主の住所が登記簿と合っているかです。検索用情報を申し出てあっても、法務局が直すまでのあいだ、登記簿の住所は古いままです。

法務局が出している売買の登記の記載例(申請書の書き方の見本)は、合っていなければ事前に住所を今のものに変える登記が必要だ、と書いています。売る前に住所を合わせておくこの決まりは、義務化より前からあります。

法務局『所有権移転登記(売買)記載例』の(注4)。「売主の住所及び氏名又は名称を記載します。この記載は、登記記録(登記事項証明書)に記録されている内容と一致している必要があります。一致していない場合には、事前に売主の住所及び氏名又は名称を現在のものに変更する登記(登記名義人の住所の変更の登記等)が必要となります。」
注は、照らし合わせる相手を括弧の中で「登記事項証明書」と名指ししています。冒頭の設問で司法書士が取れなかったのは、この照合に使う書類です(法務局の売買の記載例・令和8年10月5日以降申請用、2026年10月6日確認)。

この人なら、通知は12月中旬以降、決済は春です。答えて登記が終わり、登記簿の住所が今の住所になっていれば、記載例の言う事前の変更はそれで済みます。ただ、その登記が春に間に合うかは、答える前には読めません。

待てないと司法書士が見るなら、住所の変更は売買の前提の登記として自分で申請する道があります。法務省のQ&Aにも、申し出てあって売却を控えた人が、スマート変更登記を個別にしてもらえないかと尋ねる設問があります。答えは、法務省が決めた日程で動くので、個別に早めてはもらえない。急ぐなら自分で申請を、です。

「希望しない」と答えたり、1か月の期限までに答えなかったりすると、法務局が登記の申請を促す催告を出すきっかけになる、と法務省の通達にあります。催告は書面で届き、そこで決めた期限までに申請すれば、過料(登記の申請を怠ったときの金銭の制裁)の通知はしない、とも通達は書いています。催告が求める申請も、自分で出す住所の変更の登記です。

売却の話が動き出したら、検索用情報を申し出てあることを、仲介の会社と司法書士に最初に伝えておきます。住所の変更をどの道で済ませるかを、決済の日程と合わせて組んでもらうためです。通知が届いたら、答える前に決済の予定と並べて、司法書士に見せてください。売る土地の分を外して答えられるかと、自分で申請したあとに届いた通知の扱いは、そのとき司法書士か管轄の法務局に確かめます。

すでに答えていたら

答えて証明書が取れなくなっていたら、管轄の法務局に問い合わせれば、手続中の登記がスマート変更登記かどうかを答えてもらえます。冒頭の設問に法務省が付けた回答です。

完了までの日数は一般には公表されていませんが、手続が始まってからなら、その登記の完了予定日も管轄の法務局が答えてくれます。通知を手にした時点で分かっている日付は、決済の予定日と、通知から1か月という回答の期限です。

2026年10月6日時点の法務省のQ&A・スマート変更登記の案内、法務省の通達、法務局の記載例によります。

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