市区町村の国民健康保険・後期高齢者医療から出る葬祭費と、会社の健康保険から出る埋葬料は、呼び名が違うだけの同じ給付ではありません。窓口が別で、出るのはどちらか一方です。重ならないよう止めているのは国保の側で、大阪市の葬祭費のページには、ほかの健康保険などから葬祭費に相当する給付を受けられる場合には支給しない、とあります。同じ調整を自分のページに載せている市区町村はほかにもあります。
例外の行き先もあります。業務中・通勤中の死亡について、同じ死亡で労災などから相当する給付を受けられる場合は健康保険からは行わない、と法律が明文で分けていて、行き先は労災の側になります。たいていはそれ以外で、葬祭費か埋葬料のどちらかです。葬儀のあとに最初にすることは、書類をそろえることでも申請書を書くことでもなく、その二つのどちらなのかを決めることになります。
行き先を決めているのは、会社の健康保険を抜けた日のほうです
窓口を決める材料として手元にあるのは、たいてい故人の保険証です。国保の保険証なら市区町村、会社の健康保険証なら旧勤務先。ただ、この見方が反対の答えを出す場面があります。
退職などで会社の健康保険の資格を失ってから3か月以内に本人が亡くなったときは、最後の保険者から埋葬料が支給されます。そのぶん、さきほどの調整のある市区町村からは、葬祭費が出ません。**春に会社を辞めて国民健康保険へ切り替え、その2か月後に本人が亡くなったなら、手元にあるのが国保の保険証でも、行き先は旧勤務先の健康保険です。**この3か月に、勤めていた期間の長さは関係ありません。資格喪失前の被保険者期間の長さは問われない、というのが協会けんぽの説明で、数か月で辞めた勤めでも、ここから外れる理由にはなりません。
ただし、3か月以内なら必ず出る、というものでもありません。健康保険の側には国保にない受給者の条件があり、退職後に別の会社の健康保険へ入り直していて、そちらで埋葬料をすでに請求している場合は、旧保険者からは出ません。退職してからは国民健康保険だけ、という場合には、この除外は当たりません。
逆向きの例外もあります。3か月を過ぎていたら健康保険の側は関係ない、とも限りません。ただしこの例外は3か月の要件とは別に立っていて、さきほど問われなかった期間の長さが、こちらでは条件になります。故人が健康保険の被保険者だった期間が、会社や保険者ごとではなく通算で途切れずに1年以上あったことと、資格を失った時点で傷病手当金か出産手当金を受けていたことの、両方がそろう場合に限られます。勤め先が変わっていても、被保険者であることが途切れていないなら、最後の保険者での期間の短さだけで外れるとは限りません。辞めるころにそのどちらの手当金も受けていなかったのなら、この例外は関わってきません。受けていた覚えがあるなら、1年に届くかどうかがはっきりしなくても、日数を数えるより先に、そのことを保険者へ伝える話になります。
連絡先は、故人が最後に入っていた健康保険の保険者と、最後に勤めていた会社です。会社のほうが入るのは、事業主が出す資格喪失届の処理が済んでからの支給になるためで、会社の健康保険を抜けた日そのものも、この両方が記録として持っています。死亡届を出しても、その日は出てきません。
この調整をページに書いているかどうかは、自治体で分かれます。今回確認した13の自治体では、7つが載せていて、6つには見当たりませんでした。見当たらなかったほうは、ページを読んだところまでで、条例の原文とは突き合わせていません。載っていないことは、その団体に調整がないことを意味しません。記載のあるなしで、先に連絡する相手は変わりません。

同じ3か月が、扶養されていた家族には効きません
この3か月が守っているのは、被保険者だった本人の死亡だけです。亡くなったのが、その人に扶養されていた家族のほうだった場合には及びません。被保険者の資格喪失後に被扶養者だったご家族が亡くなった場合については家族埋葬料は支給されない、と協会けんぽが書いています。

これを明記しているのは協会けんぽで、組合健保や共済組合では扱いが異なることもあります。健康保険の側から給付を受けられないのであれば、市区町村が支給を止める理由もありません。行き先は市区町村の窓口になります。ただし、扶養されていた家族が亡くなった場合の葬祭費について、支給すると明示した自治体のページは今回確認できておらず、ここは調整規定の条件文からの整理です。
行き先を決めるのに、まず要るのは、故人が会社の健康保険をいつ抜けたかと、亡くなったのが本人か扶養されていた家族かの二つです。

どちらの窓口でも、申請できる期間は2年あります。葬儀の直後に、全部を決めておく必要はありません。
窓口が変わると、申請できる人の条件も変わります
ここから先は、行き先が決まったあとに効いてくる話です。市区町村の葬祭費は、葬祭を行った方への支給です。故人に生計を維持されていたかどうかは問われません。
健康保険の埋葬料は違います。条文は受給者を「その者により生計を維持していた者であって、埋葬を行うもの」と定めています。ここでいう「その者」は故人のことで、まず生計維持で絞られます。別居していて故人の収入に頼っていなかった子が喪主になった場合、この入口には入れません。ただし同じ条文が続きを持っていて、埋葬料を受けるべき人がいないときは、実際に埋葬を行った人に、埋葬料の額の範囲内で実費に相当する額が埋葬費として支給されます。
生計維持の要件は外れますが、上限の5万円に実費が満たなければ、支給されるのはその実費までです。この場合の支給額は、規定の側ではなく葬儀費用の領収書のほうで決まります。領収書を原本のまま残しておく意味が、市区町村の葬祭費とは別のところにあります。
喪主が誰であっても、費用を誰が払っていても、行き先そのものは入れ替わりません。会社の健康保険を抜けた日も、亡くなったのが本人か家族かも、葬儀より前の事実です。
2026年8月15日時点の制度と自治体の記載です。国民健康保険の葬祭費と健康保険の埋葬料等の調整規定は、今回確認した13の自治体のうち7団体でページ上の明記を確認したもので、記載のなかった6団体については条例の原文を突き合わせていません。記載がないことは、その団体に調整規定が存在しないことを意味しません。後期高齢者医療の葬祭費については、同じ調整に触れているページに当たっておらず、本文と図の記述は国民健康保険で確認した範囲によります。市区町村の葬祭費に生計維持の要件がないことも、確認した自治体の申請者の記載と国民健康保険法の建て付けからの整理です。健康保険の側の記述は全国健康保険協会(協会けんぽ)の公式説明に基づくもので、組合健保・共済組合は付加給付を持つことがあり、金額も取扱いも異なりえます。資格喪失から3か月を過ぎた場合の例外について、被保険者だった期間を1年以上と数えるときは、任意継続被保険者であった期間と共済組合の組合員である被保険者であった期間を除いて数えます。扶養されていた家族が亡くなった場合に市区町村から葬祭費が支給されると明示した自治体ページは確認しておらず、本文の記述は調整規定の条件文から整理したものです。根拠は健康保険法第1条・第55条・第100条・第104条・第105条・第113条、健康保険法施行令第35条、国民健康保険法第58条、高齢者の医療の確保に関する法律第86条によります。

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